「古民家」と「空き家」はどう違う?信州移住の物件探しで失敗しないための基礎知識
長野県への移住を計画し、インターネットで物件を検索していると、「古民家」と「空き家」という言葉が頻繁に出てきます。 どちらも「誰かが住んでいた家」には変わりありませんが、建築的な視点や、購入後のリスク、そして「住まいとしての価値」には大きな違いがあります。
ここをあやふやにしたまま物件探しを進めると、「思っていたのと違う」と時間を浪費してしまうことになりかねません。 信州の家を知り尽くした視点で、その違いと選び方のポイントを整理しましょう。
目次
1. そもそも定義が違う!「古民家」と「空き家」
まずは言葉の定義をはっきりさせましょう。実はこの2つ、比較する軸が異なります。
「古民家」= 建物の様式と価値
一般的に「古民家」と呼ばれるのは、昭和25年(1950年)以前の「伝統構法」で建てられた家屋を指すことが多いです。 釘を使わずに木を組み上げる「木組み」の技術や、太い梁(はり)、大黒柱、土壁などが特徴です。
単に古いだけでなく、「日本の伝統的な建築文化としての価値がある家」と言い換えても良いでしょう。信州には、養蚕農家特有の「気抜き(屋根の換気口)」がある立派な古民家が多く残されています。
「空き家」= 建物の状態
一方「空き家」とは、単に「現在、人が住んでいない家」という状態を指す言葉です。 ですから、築100年の立派な古民家も人が住んでいなければ「空き家」ですし、築5年のピカピカの洋風住宅も人がいなければ「空き家」です。
移住者が注意すべきなのは、「単に古くてボロボロになった昭和40〜50年代のプレハブ住宅」も「空き家」として市場に出ている点です。これらは「古民家」のような骨組みの強さや歴史的価値がない場合が多く、リノベーションの難易度が高くなることがあります。
2. 信州での「探し方」の違い
それぞれの性質が違うため、探すルートも異なります。
「古民家」を探すなら:人との繋がりと専門業者
状態の良い古民家は、一般の不動産サイトには出回らないことが多々あります。 なぜなら、持ち主が「先祖代々の家を大切にしてくれる人に譲りたい」と考え、信頼できる地元の工務店や設計事務所、あるいは「古民家鑑定士」などの専門家に相談するケースが多いからです。
「信州の古民家に住みたい」という明確な意思があるなら、古民家再生を得意とする地元の建築業者に「良い物件が出たら教えてほしい」と声をかけておくのが近道です。
「空き家」を探すなら:自治体の「空き家バンク」
長野県は全国的に見ても「空き家バンク」の取り組みが非常に活発です。 各市町村が運営しており、比較的安価に物件情報を掲載しています。
- メリット: とにかく安い。「0円物件」や「月数万円の賃貸」が出ることもある。
- 注意点: 玉石混交。「すぐに住める家」から「大規模改修必須の廃屋」まで混ざっています。また、現状渡し(残置物がそのままなど)が基本です。
3. 信州ならではのチェックポイントとリスク
長野県で物件を見る際、必ず確認してほしいポイントがあります。
古民家の場合:断熱性と「足元の沈下」
立派な古民家でも、長年の雪の重みや地盤の影響で、家全体が傾いていることがあります。 また、前述の通り「断熱材」は入っていないのが基本です。「寒さ対策にいくらかかるか」を、購入前に専門家に見積もってもらうことを強くおすすめします。
空き家の場合:凍結破損と「農地法」
- 水回りの凍結: 信州の冬、水道管の水抜きをせずに放置された空き家は、配管や給湯器が凍結で破裂している可能性が高いです。通水テストが必要です。
- 農地付き物件: 田舎の空き家には、田んぼや畑が付いてくることがあります。農地法の規定により、農家資格がないと買えない(農地を宅地に転用できない)ケースもあるため、事前の確認が必須です。
まとめ:あなたが求めているのは「歴史」ですか?
物件探しにおいて大切なのは、自分たちの優先順位です。
- 古民家: 多少費用がかかっても、歴史ある空間や木の温もり、伝統文化の中で暮らしたい。
- 一般的な空き家: 建物にこだわりはなく、とにかく安く移住したい。あるいは、自分好みにフルリノベーションする「箱」が欲しい。
「古民家風のカフェみたいな家」をイメージしていたのに、実際に見に行ったのは「昭和の古いプレハブ空き家」だった…というミスマッチを防ぐためにも、この違いを意識してみてください。
そして、どちらを選ぶにしても、「信州の冬を越せる家かどうか」を判断できるのは、地元の専門家だけです。 契約のハンコを押す前に、プロの意見を聞くことを強くおすすめします。