古民家再生の「水回り(キッチン・風呂)」で後悔しないポイント|信州の冬に備える「断熱」と「凍結対策」
「古民家の雰囲気は壊したくないけれど、水回りだけは最新の設備にしたい」 これは、移住者の9割がおっしゃる共通の願いです。そして、その判断は大正解です。
昔ながらの台所やお風呂は、現代の衛生基準や断熱性能を満たしていないことがほとんど。 無理して古い設備を使おうとすると、掃除が大変なだけでなく、冬の寒さに耐えられず、結局数年後に工事をやり直すことになりかねません。
信州の古民家だからこそ気をつけたい、水回りリノベーションの「落とし穴」と「解決策」をご紹介します。
目次
1. 【お風呂・トイレ】 「在来工法」へのこだわりは捨てる?
古民家のお風呂といえば、壁や床がタイル張りで、大きな木の窓がある「在来工法」が一般的です。趣はありますが、信州ではこれが仇となります。
後悔ポイント:とにかく寒い!ヒートショックの温床
タイル張りのお風呂は、断熱材が入っていないため、外気と同じくらい冷え込みます。 暖かいリビングから裸で移動した瞬間、血圧が急変動する「ヒートショック」のリスクが非常に高いのです。
解決策:「高断熱ユニットバス」を選ぶ
「古民家にユニットバスなんて味気ない」と思われるかもしれませんが、最近はデザイン性の高いものも増えています。 何より、ユニットバスは「断熱材で包まれた部屋の中に、もう一つ部屋を作る」構造のため、保温性が段違いです。
- 窓の裏技: 元の大きな窓を活かしたい気持ちは分かりますが、断熱の観点からは「窓を小さくする」か「無くす」のが正解です。もし窓を残すなら、最高グレードの断熱窓(トリプルガラス等)に変えましょう。
2. 【キッチン】 「土間勝手(どまかって)」からの脱却
昔の台所は、土間(土足エリア)にあることが多く、リビング(居間)とは壁で隔てられていました。
後悔ポイント:孤立して寒い、足元が冷える
「土間のキッチンっておしゃれ!」と憧れてそのまま採用すると、冬場は足元からの底冷えで料理どころではありません。また、家族の気配を感じられない「孤立した空間」になりがちです。
解決策:LDK一体型にして、床を上げる
キッチンをリビングと同じフロア(床)に上げ、壁を取り払って対面キッチン(アイランドやペニンシュラ)にするのがおすすめです。
- 古民家との調和: システムキッチンの面材(扉)を、ピカピカの鏡面仕上げではなく、「木目調」や「マットな質感」にするだけで、古民家の梁や柱と違和感なく馴染みます。
- 収納: 古民家は食器棚を置くスペースが少ないことが多いので、大容量のパントリー(食品庫)を隣接させるのが鉄則です。
3. 【見えない設備】 信州特有の「凍結」と「排水」リスク
ここが最も重要です。デザインの話以前に、インフラの問題を確認しなければなりません。
落とし穴①:水道管の「凍結」対策
信州の冬、氷点下が続くと水道管の中の水が凍り、破裂することがあります。 リノベーション時には、必ず以下の対策が必要です。
- 水抜き栓の設置: 長期間家を空ける際、管の中の水を抜くためのハンドル(不凍水抜栓)を操作しやすい場所に設置する。
- 凍結防止帯(ヒーター): 水道管に電気ヒーターを巻き付け、凍るのを防ぐ。古い家はこのヒーターの電気代だけで月数千円〜1万円かかることがあるため、「節電タイプ」のコントローラーへの交換が必須です。
落とし穴②:下水道が来ていない?「浄化槽」問題
長野県の山間部や農村部では、公共下水道が整備されていない地域が多いです。 その場合、敷地内に「合併処理浄化槽」を埋設する必要があります。
- 費用: 設置には100万〜200万円(補助金が出る自治体も多い)かかります。
- スペース: 車一台分くらいの埋設スペースが必要です。
この予算と場所を最初から計画に入れておかないと、「キッチンを入れたのに水が流せない!」という事態になります。
4. プロが教える「水回り移動」のコツ
「北側の暗いキッチンを、南側の明るい縁側に移動したい」 これは可能ですが、コストがかかります。
- 排水勾配(こうばい): 水を流すためには、配管に傾斜をつける必要があります。移動距離が長いと、床下の高さを確保できず、床を上げなければならないケースがあります。
- 集約させる: キッチン・風呂・トイレ・洗面は、できるだけ一箇所にまとめたほうが、配管コストが安く済み、給湯効率も良くなります(お湯がすぐ出る)。
まとめ:水回りは「現代の技術」に頼ろう
古民家再生において、柱や梁、建具といった「見える部分」は古いものを愛し、水回りや断熱といった「機能部分」は最新の技術に頼る。 この「新旧のメリハリ」こそが、信州で長く快適に暮らすための秘訣です。
- お風呂: タイルをやめて高断熱ユニットバスへ。
- キッチン: 土間から上げてLDK一体型へ。
- インフラ: 凍結防止と浄化槽の予算を忘れない。
特に「水回りの寒さ」は、実際に住んでみないと分からない怖さがあります。 デザインだけでなく、信州の冬を知る業者に「配管の凍結対策」までしっかり相談してください。