古民家再生と「固定資産税」の関係。リノベで税金は上がる?安くなる?維持費の真実
長野県で憧れの古民家暮らし。 物件価格やリノベーション費用といった「初期費用」に目が行きがちですが、長く住む上でボディブローのように効いてくるのが、毎年1月1日時点の所有者にかかる「固定資産税」です。
一般的に「古民家は固定資産税が安い」と言われますが、大規模なリノベーションを行うとどうなるのでしょうか? 「せっかく安く買ったのに、リフォームしたら税金が跳ね上がった!」とならないよう、正しい知識と、使える減税制度を押さえておきましょう。
目次
1. 原則:古民家の固定資産税は「激安」です
まず大前提として、古民家(築年数が古い木造住宅)の固定資産税は、新築に比べて圧倒的に安いです。
固定資産税は、家屋の「評価額」に税率(標準1.4%)をかけて計算されます。 木造住宅の場合、築年数が経つごとに評価額は下がり続け、築25年〜30年ほどで「下限値(再建築価格の約2割)」まで下がります。
つまり、築50年や100年の古民家は、建物としての価値は(税制上は)底値になっており、「これ以上下がらないけれど、新築に比べればタダ同然」という状態なのです。 年間数千円〜数万円程度で済むケースも珍しくありません。これが古民家暮らしのランニングコストにおける最大のメリットです。
2. リノベーションで税金が「上がる」境界線
では、リノベーションを行うと、この評価額は見直され、税金は上がるのでしょうか? 答えは「工事の内容による」です。
税金が「上がらない(据え置き)」ケース
一般的なリフォームであれば、評価額は変わりません。
- 壁紙や床の張り替え
- キッチン、トイレ、お風呂の交換
- 外壁塗装、屋根の塗り替え
これらは「維持管理・修繕」とみなされ、建物の価値そのものが増えたとは判断されないため、税金は安いままです。
税金が「上がる可能性がある」ケース
注意が必要なのは、「建築確認申請」が必要になるような大規模工事です。 自治体の資産税課による「家屋調査」が入り、評価額が見直される可能性があります。
- 増築(床面積が増える): 部屋を増やしたり、サンルームを作ったりして床面積が増えた場合、その増えた分は「新築」扱いで課税されます。
- 用途変更(店にするなど): 住宅の一部をカフェや店舗、事務所に改装する場合、評価基準が変わることがあります。
- スケルトンリノベーション(主要構造部の改修): 柱や梁だけを残して大規模に作り変える場合、「建築確認申請」が必要になり、新築に近い評価額に再計算される可能性があります。 (※ただし、自治体の運用により判断が分かれるグレーゾーンです。「あくまで修繕」とみなされれば上がらないこともあります。)
3. 知らないと損!リフォームで税金が「安くなる」減税制度
ここが最も重要なポイントです。 一定の条件を満たすリノベーション(要件改修工事)を行うと、工事完了後の翌年度分、固定資産税が減額される制度があります。
これらは申請しないと適用されません。「上がる心配」をするより、「下げる申請」を忘れないようにしましょう。
① 耐震改修(減額期間:1年間)
- 内容: 現行の耐震基準に適合させる工事(費用50万円超)。
- 効果: 翌年度の固定資産税が1/2(半額)になります。
- 長期優良住宅化: 耐震改修を行い、さらに「長期優良住宅」の認定を受けると、減額期間よりも有利な2/3減額になります。
② 省エネ改修(減額期間:1年間)
- 内容: 窓の断熱改修(必須)+床・天井の断熱工事など(費用60万円超 ※条件あり)。
- 効果: 翌年度の固定資産税が1/3減額されます。
- 長期優良住宅化: こちらも認定を受けると2/3減額になります。
③ バリアフリー改修(減額期間:1年間)
- 内容: 手すりの設置、段差解消、通路の拡幅など(費用50万円超)。
- 対象: 65歳以上の方などが居住している場合。
- 効果: 翌年度の固定資産税が1/3減額されます。
※注意:基本的にこれらの減税措置は併用できません(耐震+省エネの併用は不可など)。どの制度を使うのが一番お得か、工務店に試算してもらいましょう。
4. 信州特有の注意点:「蔵」や「山林」も課税対象
長野県の古民家物件には、母屋以外に「土蔵」「納屋」「広大な敷地」がついていることがよくあります。
- 蔵や納屋: 崩れかけていても、屋根と壁があれば課税対象です。使わないなら「解体」して「滅失登記」をすれば税金はゼロになります(ただし解体費用がかかります)。
- 農地・山林: 宅地以外の土地(畑や山)は税金が非常に安いですが、農地法の制限で簡単に売買や転用ができません。税金よりも「維持管理の手間(草刈り)」がコストになります。
まとめ:ランニングコストで選ぶなら古民家は優秀
- 基本: 古民家の固定資産税は安い。
- 上がる時: 増築や大規模改修(確認申請レベル)をすると上がる可能性がある。
- 下げる技: 耐震・省エネリフォーム減税を必ず申請する。
新築住宅を建てると、評価額が高いため、当初の減税期間が終わった後に税金の負担感がドッとかかることがあります。 一方、古民家再生は、初期費用こそかかりますが、毎年の税金という「見えない家賃」を低く抑えられる点で、長い目で見れば経済的に賢い選択と言えるでしょう。
リノベーションのプランを作る際は、工事費だけでなく「その後の税金」についても、地元の詳しい業者に相談してみてください。