古民家再生の「DIY」はどこまで可能?素人がやるべき作業と、プロに任せるべき「一線」
「ハーフビルド」や「セルフリノベーション」という言葉が流行り、古民家DIYへのハードルは下がっています。 YouTubeを見れば、素人でも簡単にリフォームできるように見えますよね。
しかし、画面の中と現実は違います。特に築年数の古い古民家は、一筋縄ではいかない「癖」があります。 無理なDIYで失敗し、結局プロに修正を頼んで「最初から頼むより高くついた…」というケースも少なくありません。
賢くコストを下げ、楽しく家づくりをするために、「プロ領域(Safety)」と「DIY領域(Finish)」を正しく切り分けましょう。
目次
1. 【絶対NG】 プロに任せるべき「命と法律」に関わる領域
ここは節約どころではありません。安全性、法律、そして信州特有の気候対策のため、必ずプロに依頼してください。
① 構造・耐震補強(柱・梁・基礎)
古民家の骨組みは、複雑なバランスで成り立っています。 「邪魔だから」と柱を一本抜いただけで、雪の重みで家が歪んだり、地震で倒壊したりする恐れがあります。 構造に関わる変更や補強は、大工さんや建築士の聖域です。
② 電気・ガス・水道(インフラ)
- 電気・ガス: 免許(電気工事士など)がないと工事自体が法律で禁止されています。火災の原因になります。
- 水道: 信州では「凍結防止対策」や「勾配(水はけ)」の計算がシビアです。素人が配管すると、「冬に水が出ない」「排水が逆流する」といった悲劇が起きます。
③ 断熱工事(特に壁の中)
「断熱材を壁に入れるだけでしょ?」と思うかもしれませんが、これが最大の落とし穴です。 寒冷地で不適切な断熱施工(防湿シートの不備など)を行うと、「壁内結露」が発生し、見えないところで柱が腐り始めます。 気密・断熱の施工は、高度な知識を持ったプロに任せるのが家の寿命のためです。
④ 屋根・高所作業
古民家の屋根は高く、瓦は重いです。慣れていない人が登るのは自殺行為です。 雨漏りの原因特定もプロでさえ難しい作業ですので、屋根周りは専門家に任せましょう。
2. 【おすすめ】 DIYでコストダウン&愛着アップできる領域
プロが作った「安全な下地」の上に、自分たちで「化粧(仕上げ)」をする。これが最も賢いDIYスタイルです。
① 壁の「塗装・漆喰(しっくい)塗り」
おすすめ度:★★★★★ 最も人気があり、コスト削減効果も高い作業です。 既存の土壁や、プロが張ってくれた石膏ボードの上に、漆喰や珪藻土、ペンキを塗ります。 多少のムラも「味」になりますし、家族みんなでイベントとして楽しめます。
② 木部の「塗装・オイル塗り」
おすすめ度:★★★★★ 古民家の魅力である柱や梁、新しい無垢の床材に、自然塗料(柿渋、エゴマ油、オスモなど)を塗る作業です。 技術もそれほど要らず、木材を保護し、美しく経年変化させるための重要な工程です。
③ 「解体・清掃」の一部
おすすめ度:★★★☆☆ 工事前の片付けや、畳上げ、簡単な内装解体(土壁落としなど)は、自分たちで行うことで解体費用の節約になります。 ただし、廃材の処分にはルールがあるため、事前に業者と「どこまでやっていいか、ゴミはどうするか」を相談してください。
④ 棚やカウンターの製作
おすすめ度:★★★★☆ キッチンカウンターや洗面所の棚など、家具に近い部分はDIYの独壇場です。 サイズぴったりの収納を作れるのはDIYならではの醍醐味です。
3. 信州古民家DIYの成功パターン「ハーフビルド」
最も推奨するのは、「難しい工事はプロ、仕上げは自分」という「ハーフビルド(施主施工)」という進め方です。
【理想的な役割分担の例】
- プロの仕事:
- 基礎、構造補強
- 断熱材の充填、サッシ交換
- 電気・水道の配線・配管
- 壁・床・天井の「下地」作り(ボード張りまで)
- あなたの仕事(DIY):
- 壁の漆喰塗り
- 床のオイル塗装
- 洗面台のタイル貼り
- カーテンレールの取り付け
これなら、家の性能(暖かさ・丈夫さ)はプロ品質を担保しつつ、目に見える部分は自分たちの手作り感を残せます。工務店にとっても、手間のかかる仕上げ作業を施主がやってくれるなら、その分費用を安くできます。
4. DIYを始める前に「業者選び」が重要
実は、すべての工務店がDIYに協力的とは限りません。 「素人が手を出すと工期が遅れる」「責任の所在が曖昧になる」として、施主施工を嫌がる業者もいます。
DIYを計画に入れたい場合は、最初の相談段階で「壁塗りは自分たちでやりたいのですが、協力してくれる(あるいは指導してくれる)業者ですか?」と確認することが大切です。
まとめ:怪我なく楽しく、が一番の節約
- プロ領域: 構造、インフラ、断熱、屋根。「家の性能」に関わる部分は手を出さない。
- DIY領域: 塗装、左官、棚作り。「見た目」に関わる部分で個性を出す。
- コツ: DIYに理解のある工務店を見つけ、「ハーフビルド」で協力体制を作る。
古民家再生は、完成して終わりではありません。住み始めてからも、薪割りをしたり、庭を整えたりと「DIY」の日々は続きます。 リノベーションの段階では無理をしすぎず、プロの力を上手に借りて、長く住める頑丈なベースを作ってください。