長野の冬を制する「壁・天井」断熱リフォーム。安さの「充填」か、最強の「外張り」か?プロが教える選び方
「壁のリフォームなんて、クロス(壁紙)を張り替えるだけでしょ?」 もしそう思っているなら、非常にもったいないです。
壁や天井をいじるタイミングこそ、「家の断熱性能を劇的に上げる千載一遇のチャンス」だからです。 特に信州の古い家は、壁の中が空洞(または薄い断熱材のみ)であることが多く、ここを強化するだけで、魔法瓶のように熱を逃さない家に生まれ変わります。
リフォームにおける断熱工法には、大きく分けて「内側から詰める(充填)」か「外側から包む(外張り)」かの2択があります。 予算や家の状況に合わせてどちらを選ぶべきか、判断基準を整理しましょう。
目次
1. 【充填断熱】 内側から攻める、コスパの良い標準工法
柱と柱の間の空間に、断熱材を詰め込む方法です。日本の木造住宅では最も一般的なやり方です。
- 工法: 部屋の内壁(石膏ボードなど)を剥がし、柱の間にグラスウールやセルロースファイバーなどの断熱材を入れ、再び壁を貼ります。
- 費用相場:中(標準的)
- 壁を解体・復旧する費用が含まれますが、外張り断熱よりは安価です。
- メリット:
- 外観が変わらない: 外壁はそのままで良いため、古民家の渋い外観を残したい場合に最適です。
- 部屋ごとに工事可能: 「リビングだけ」「寝室だけ」といったゾーン断熱に対応しやすいです。
- デメリット:
- 部屋が少し狭くなる: 断熱材の厚みを確保するために、壁を少し手前に出す(ふかす)場合、数センチ部屋が狭くなります。
- 熱橋(ヒートブリッジ): 柱(木材)の部分には断熱材が入らないため、そこから熱が逃げやすくなります。
- 工事中の生活: 住みながらの工事は、ホコリが出るため荷物の移動が大変です。
★こんな人におすすめ
- 外壁や外観は今のまま残したい。
- フルリノベーション(スケルトン)で、内装を一度全部解体する予定がある。
- 予算を抑えつつ、十分な断熱性能を確保したい。
2. 【外張り断熱(付加断熱)】 外から丸ごと包む、高性能工法
家の外側から、柱や壁ごとすっぽりと断熱材で覆ってしまう方法です。
- 工法: 今の外壁の上からボード状の断熱材を張り付け、その上から新しい外壁材(サイディングや塗り壁)を仕上げます。
- 費用相場:高(高額)
- 足場代、新しい外壁材の費用がかかるため、充填断熱の1.5倍〜2倍近くかかることもあります。
- メリット:
- 断熱性能が最強: 柱ごと外側から包むため、熱の逃げ道(熱橋)がなくなり、家全体が均一に暖かくなります。
- 柱が長持ち: 構造体が室内の暖かい環境下に置かれるため、結露リスクが減り、建物の寿命が延びます。
- 住みながら工事: 主に外側の工事なので、室内の荷物を動かさずに施工できます。
- デメリット:
- 外観が変わる: 家の「顔」が完全に新しくなります。また、壁が厚くなるため、窓が奥まった位置になります。
- 費用が高い: 大規模な工事になるため、予算確保が必要です。
★こんな人におすすめ
- 外壁が傷んでいて、塗り替えや張り替えの時期に来ている。
- 予算をかけてでも、最高レベルの断熱性能(新築以上)を手に入れたい。
- 家の中の荷物が多くて動かせない。
3. 信州の古民家再生には「どっち」が良い?
結論から言うと、信州の古民家リノベーションでは「充填断熱」、もしくは「充填+付加断熱(ハイブリッド)」が選ばれることが多いです。
理由①:土壁との相性
古民家の多くは「土壁」です。土壁は調湿性能や蓄熱性能があるため、それを壊さずに活かしたいと考える方が多いです。 その場合、「内側に木枠を組んで断熱材を入れる(内断熱・充填断熱)」方が、コストと性能のバランスが取りやすいのです。
理由②:古材(梁・柱)の見せ方
「天井の梁を見せたい(現し仕上げ)」という場合、天井裏で断熱することはできません。 必然的に、屋根のすぐ下で断熱する「屋根断熱」になります。 これは充填断熱の一種ですが、屋根の勾配(斜め)に沿って断熱材を入れるため、高い技術が必要です。
プロの推奨:セルロースファイバー
充填断熱を選ぶ際、信州の古民家に特におすすめなのが「セルロースファイバー(新聞紙のリサイクル素材)」です。
- 調湿性: 木や土壁と同じように湿気を吸ったり吐いたりするため、家が腐りにくい。
- 隙間なし: 吹き込み施工なので、古民家の歪んだ壁の中にもパンパンに充填でき、隙間風をシャットアウトします。
まとめ:リノベの「規模」で決めよう
- 内装を全部剥がすなら: コスパの良い「充填断熱」。断熱材にはセルロースファイバーや高性能グラスウールを推奨。
- 外壁がボロボロなら: 外壁リフォームついでに「外張り断熱」。一石二鳥で最強の性能に。
- 究極の寒がりなら: 内と外の両方で断熱する「ダブル断熱(充填+付加)」。信州の極寒地(軽井沢や原村など)では標準になりつつあります。
壁と天井の断熱は、一度やってしまえば数十年メンテナンスフリーで、毎日の光熱費と快適さを保証してくれます。 「見えない部分」ですが、クロス選びよりも時間をかけて検討する価値があります。