別荘・寒冷地リフォーム

断熱材の種類と費用比較|グラスウール・ウレタン・セルロースファイバー、信州の古民家にベストなのは?

断熱材の種類と費用比較|グラスウール・ウレタン・セルロースファイバー、信州の古民家にベストなのは?

長野県の冬は、「寒さ」だけでなく「結露」との戦いです。

断熱材選びを間違えると、壁の中でカビが生えたり、せっかくリフォームしたのに隙間風が止まらなかったりと、悲惨な結果を招きます。

重要なのは、それぞれの断熱材の「断熱性能」だけでなく、「湿気への強さ」と「施工のしやすさ(隙間の埋めやすさ)」を知ることです。

プロが現場でどう使い分けているのか、その判断基準を公開します。

1. 【グラスウール】 コスパ最強の王道素材

ガラスを繊維状にした、綿のような断熱材です。日本の住宅で最も普及しています。

  • 特徴:安価で燃えにくい。素材自体はガラスなのでシロアリにも強い。
  • 信州での評価: 条件付きで「○」昔のグラスウールは「スカスカで結露してカビる」という悪評がありましたが、現在の「高性能グラスウール(16k〜24k)」は非常に優秀です。ただし、「防湿シート」の施工精度が命です。ほんの少しでも隙間があると、そこから湿気が入り込み、内部結露を起こして濡れた布団のようになります。
  • 費用目安:低(最も安い)
    • 約 3,000円〜 / 坪

向いているケース

  • 予算をなるべく抑えたい。
  • 壁をすべて剥がして、防湿シートからきっちり施工できるフルリノベーションの場合。

2. 【発泡ウレタン(吹き付け)】 隙間を許さない密着力

現場でスプレーのように薬剤を吹き付け、モコモコと膨らんで固まる断熱材です。

  • 特徴:自己接着性があり、柱や壁にピタッと張り付きます。複雑な形状でも隙間なく埋められるのが最大の強みです。
  • 信州での評価: 床下・屋根裏に「◎」気密性(C値)を出しやすいため、隙間風が多い古民家には効果テキメンです。特に、下から吹き付けられる「床下断熱」や、複雑な形状の「屋根裏」の断熱には最適解の一つと言えます。ただし、一度吹き付けると解体時の分別が大変で、リサイクルが難しいという側面もあります。
  • 費用目安:中〜高
    • 約 15,000円〜 / 坪
    • 専門の職人とトラックが必要なため、グラスウールより高くなります。

向いているケース

  • 床下からの底冷えを解消したい(床を壊さずに施工したい)。
  • とにかく「隙間風」をなくして、気密性の高い家にしたい。

3. 【セルロースファイバー】 古民家再生の救世主

新聞紙をリサイクルした木質繊維の断熱材です。専門の機械で壁の中にパンパンに吹き込みます。

  • 特徴:最大の武器は「調湿性能(吸放湿)」です。木材と同じように湿気を吸ったり吐いたりするため、土壁や無垢材で作られた古民家と非常に相性が良いです。また、ホウ酸が含まれているため、「防虫(ゴキブリ・シロアリ)・防燃」効果があり、「防音性」も極めて高いです。
  • 信州での評価: 古民家リノベに「★特選」古民家は「防湿シート」を完璧に貼るのが構造上難しいケースが多いです。セルロースファイバーなら、多少の湿気が入っても自ら調整してくれるため、壁内結露のリスクを劇的に下げられます。
  • 費用目安:高(最も高い)
    • 約 20,000円〜 / 坪
    • グラスウールの2〜3倍のコストがかかります。

向いているケース

  • 古民家の「呼吸する壁(土壁など)」を活かしたい。
  • 結露やカビ、害虫が心配。
  • 静かな家にしたい(雨音や外の音が聞こえなくなります)。

4. 【比較表】 3大断熱材のスペック一覧

項目グラスウール発泡ウレタンセルロースファイバー
断熱性能○(施工による)◎(隙間なし)◎(隙間なし)
調湿性能×(湿気に弱い)△(透湿しにくい)◎(呼吸する)
防音性能◎(非常に高い)
施工難易度高(腕の差が出る)中(専門業者)中(専門業者)
費用安い普通〜高い高い
古民家相性△(防湿必須)○(床・屋根)◎(壁・天井)

5. 結論:信州の古民家、どこに何を使う?

「全部高い材料を使えばいい」わけではありません。適材適所で使い分けるのが、賢い信州のリノベーションです。

おすすめの組み合わせ例(ハイブリッド断熱)

  1. 壁・天井(居住スペース): 「セルロースファイバー」人が生活する場所は、湿気が出やすいです。調湿性と防音性を重視して、少々高くてもセルロースを採用します。快適性が段違いです。
  2. 床下(基礎断熱): 「発泡ウレタン(またはスタイロフォーム)」湿気がこもりやすく、形状が複雑な床下は、湿気を吸わないプラスチック系の断熱材で固めます。
  3. あまり使わない部屋・壁: 「高性能グラスウール」納戸や客間など、優先順位が低い場所は、コスパの良いグラスウールで費用を抑えます。ただし、防湿施工はプロに徹底してもらってください。

まとめ:断熱材は「素材」より「施工」

最後に一番大切なことをお伝えします。

どんなに高性能な断熱材を使っても、「施工が雑で隙間があれば、ゴミと同じ」です。

逆に、安いグラスウールでも、熟練の大工さんが隙間なく丁寧に施工すれば、信州の冬でも十分に暖かい家になります。

見積もりを見る際は、単に「グラスウールだから安い、セルロースだから高い」と判断せず、

「この断熱材を、どのように施工して気密性を確保するのですか?」

と業者に質問してみてください。その答えにこそ、業者の実力が表れます。