古民家の「床」DIY、素人がやって大丈夫?張り替え費用と、信州で絶対外せない「断熱」の罠
古民家の床は、長年の使用でブカブカしていたり、寒々しい合板フローリングが張られていたりと、改修必須のポイントです。
ここを無垢(むく)のフローリングに変えるだけで、家の雰囲気は一気に「憧れの古民家カフェ」のようになります。
しかし、安易に始めてしまうと、「斜めに隙間が開いてしまった」「せっかく張り替えたのに足元が冷たくて座っていられない」という失敗に直結します。
DIYで成功させるための手順と、プロに任せるべき判断基準を整理しましょう。
目次
1. 床DIYの2つの方法:難易度と費用
床をきれいにするには、大きく分けて「重ね張り」と「張り替え」の2種類があります。
① 初級編:重ね張り(上張り)
今の床の上から、新しいフローリング材を重ねて張る方法です。
- メリット: 解体ゴミが出ない。工期が早い。廃材処分費がかからない。
- デメリット: 床が1.5cmほど高くなるため、ドアが開かなくなったり、敷居との段差ができたりする。断熱材を入れるスペースがない。
- 費用: 材料費のみ(6畳で約3万〜5万円 ※無垢材の場合)
② 上級編:張り替え(剥がして張る)
今の床をすべて撤去し、下地(根太)からやり直す方法です。信州の古民家再生では、基本的にこちらを推奨します。
- メリット: 断熱材を床下に入れられる(最重要)。 腐った下地を交換できる。床の高さを調整できる。
- デメリット: 解体が大変。ゴミの処分に困る。水平を取るのが難しい。
- 費用: 材料費+下地材+断熱材+処分費(6畳で約6万〜10万円)
2. 信州で失敗しないための「必須3工程」
温暖な地域なら「見た目が綺麗になればOK」ですが、長野県ではそうはいきません。以下の3つを無視すると、後悔することになります。
その1:断熱材を「これでもか」と入れる
古民家の床下は、外気と同じ温度です。
フローリングの下にある「根太(ねだ)」という骨組みの間に、スタイロフォーム(発泡プラスチック系の断熱材)などの断熱材を隙間なく詰め込んでください。
これがあるかないかで、冬の体感温度は5度以上変わります。
その2:不陸(ふろく)調整という難関
古民家の床は、長年の重みで必ず傾いたり波打ったりしています(これを不陸と言います)。
そのまま新しい板を張ると、ギシギシ鳴ったり、家具が傾いたりします。
薄いベニヤ板や「パッキン」を挟んで、下地を水平にする作業が必要です。これがDIYで最も根気と技術がいる工程です。
その3:無垢材の「伸縮」を知る
信州特産の「カラマツ」や「スギ」などの無垢材は、湿度によって膨らんだり縮んだりします。
施工時にギチギチに詰めすぎると、梅雨時に膨張して床が突き上がってしまいます。
ハガキ1枚分(スペーサー)の隙間を空けながら張っていくのがコツです。
3. 費用対効果:プロに頼むといくら?
「やっぱり大変そう…」と思った方へ。プロに頼んだ場合の相場とも比較してみましょう。
| 項目 | DIYの場合(材料費のみ) | プロに依頼(材工共) | 備考 |
| フローリング張り | 3,000〜8,000円 / 坪 | 15,000〜30,000円 / 坪 | プロは道具代・技術料込み |
| 断熱材施工 | 2,000〜3,000円 / 坪 | 5,000〜8,000円 / 坪 | 気密処理の精度が違う |
| 下地調整 | 1,000〜3,000円 / 坪 | 状態による(別途見積) | 水平を出すプロの技術 |
結論: DIYならプロの1/3〜1/4の費用で済みます。
ただし、6畳一間を仕上げるのに、慣れない人だと週末作業で1ヶ月近くかかることもあります。その「時間と労力」をどう捉えるかです。
4. 信州ならではの「樹種選び」
せっかくDIYするなら、ホームセンターの安い合板ではなく、信州らしい無垢材を使いましょう。
- 信州カラマツ(唐松):赤みのある美しい木目と、高い強度が特徴。経年変化で飴色になります。信州の床材の定番です。
- スギ(杉):空気を多く含んでおり、「触れた時にヒヤッとしない」のが最大の特徴。柔らかいので傷はつきやすいですが、素足で過ごしたいリビングには最適です。
- 広葉樹(ナラ・クリなど):硬くて傷に強いですが、針葉樹(スギ・マツ)に比べると少し冷たく感じます。キッチンや土間周りにおすすめです。
まとめ:床DIYは「断熱」とセットで!
古民家の床張り替えDIYは、コストダウン効果が高く、達成感も大きい素晴らしいプロジェクトです。
- 鉄則: ただ板を張るだけでなく、必ず床下の「断熱」を行うこと。
- 注意: 下地が腐っていたり、シロアリがいたりしたら、そこで作業を止めてプロを呼ぶこと。
- おすすめ: 「リビングだけはプロに水平に張ってもらい、寝室や子供部屋はDIYで頑張る」という使い分け。
冬の朝、素足で歩いても冷たくない無垢の床。
その心地よさは、苦労して張った人だけが味わえる特権です。まずは小さな部屋(6畳間など)からチャレンジしてみてはいかがでしょうか?