古民家再生

【規模別】古民家再生の費用相場|フルリノベと部分改修、信州で快適に住むならどっち?

【規模別】古民家再生の費用相場|フルリノベと部分改修、信州で快適に住むならどっち?

「古民家をリノベーションして住みたいのですが、いくらくらいかかりますか?」

この質問は、私たち専門家にとって最も答えるのが難しい質問の一つです。なぜなら、「どこまでやるか」によって、桁が一つ変わることもあるからです。

一言でリノベーションと言っても、内装をきれいにするだけの工事から、骨組みだけ残して作り直す工事まで千差万別。特に寒冷地である信州では、「断熱工事」をどの程度行うかが費用のカギを握ります。

この記事では、大きく「フルリノベーション」と「部分改修」の2つのパターンに分け、それぞれの費用目安と、信州暮らしにおけるメリット・デメリットを整理しました。

1. まるで新築!「フルリノベーション」の費用と特徴

家の構造体(柱・梁・基礎・屋根)だけを残してすべて解体し、一から作り直す方法です。「スケルトンリフォーム」とも呼ばれます。

費用相場:1,500万円 〜 3,500万円

(※延床面積 30〜40坪程度の場合)

この金額を見て「高い!」と思われたかもしれません。しかし、これは実質的に「新築注文住宅を建てるのと同じ(あるいはそれ以上)」の手間と技術を投じる工事です。

  • 工事内容:
    • 解体・撤去(構造体以外すべて)
    • 基礎の補強・耐震補強
    • 屋根の葺き替え・補修
    • 断熱改修(壁・床・天井すべてに断熱材充填+高性能サッシへ交換)
    • 水回り設備(キッチン・バス・トイレ)の全交換
    • 内装・外装の仕上げ

信州でのメリット

最大のメリットは、「冬の暖かさ」と「耐震性」を新築同等レベルまで引き上げられることです。

隙間風を完全にシャットアウトし、家全体を暖かく保てるため、ヒートショックのリスクもなくなります。

「古民家の見た目が好きだけど、寒いのだけは絶対に嫌だ」という方には、この選択肢が唯一の正解と言えます。

2. 予算を抑える「部分改修(水回り+内装)」の費用と特徴

使える部屋はそのまま使い、キッチンやお風呂などの水回りと、普段過ごすリビング周辺だけを綺麗にする方法です。

費用相場:300万円 〜 1,000万円

予算をコントロールしやすいのが特徴です。

「お風呂とトイレだけ新しくして(約200万円)、あとは自分たちでDIYで漆喰を塗る」といった工夫次第で、さらに費用を抑えることも可能です。

  • 工事内容:
    • 水回り設備(キッチン・バス・トイレ)の交換
    • リビングや寝室の内装張り替え(クロス・床)
    • (場合によっては)リビングの窓だけ二重窓にする

信州でのデメリットと対策

最大の課題は「寒さ」です。改修していない部屋や廊下は、外気と変わらない寒さのまま残ります。

信州でこの手法をとる場合、「ゾーン断熱(部分断熱)」を組み合わせるのが賢い方法です。

生活の中心となるLDKと寝室だけを箱のように断熱材で囲ってしまうことで、費用を抑えつつ、活動エリアの快適さを確保します。

3. 意外な落とし穴!信州特有の「プラスα」費用

物件購入費とリノベ費用の他に、古民家ならではの「隠れた費用」が発生することを忘れてはいけません。

項目費用目安備考
残置物処分費30万〜100万円前の住人の荷物が大量に残っている場合、処分には多額の費用がかかります。
浄化槽設置工事100万〜200万円信州の山間部は下水道が通っていない地域が多いです。「合併処理浄化槽」の設置が必要になります。
屋根・雨漏り修繕100万〜300万円雪国では屋根のダメージが深刻なケースが多いです。雨漏りは家の寿命に関わるため、最優先の修繕箇所です。
薪ストーブ設置100万〜150万円憧れの薪ストーブ。本体だけでなく、煙突工事や炉台の設置も含めるとこのくらいかかります。

4. 失敗しない予算計画のコツ

「予算オーバーで、やりたかったことができなかった…」とならないために、以下のステップで計画を進めましょう。

  1. 総予算を決める:「物件購入費」+「リノベーション費」+「予備費(100〜200万円)」の合計上限を決めます。
  2. 優先順位をつける:「広いキッチン」よりも「寒くないお風呂」を優先するのか、など。信州では「断熱」の優先順位を上げることを強く推奨します。
  3. プロに「概算」ではなく「詳細」を見てもらう:契約前に、工務店や建築士に現地を見てもらい、「この状態で住めるレベルにするには最低いくらかかるか」をズバリ聞きましょう。

まとめ:安さよりも「長く住めるか」で判断を

  • フルリノベ(1,500万円〜): 新築同様の快適さと安心感。終の棲家にするならこちら。
  • 部分改修(300万円〜): 予算重視。寒さ対策(ゾーン断熱)の工夫が必須。

「古民家だから安く済む」というのは、今の信州では通用しにくいのが現実です。

しかし、新築では手に入らない立派な木材や空間を、リノベーション費用だけで手に入れられると考えれば、それは十分に価値ある投資です。

まずは、あなたの予算内で「どこまでできるか」、地元のプロにシミュレーションしてもらうことから始めませんか?