古民家再生

古民家再生の業者「見積もり」でチェックすべき重要項目|「一式」は危険?追加費用を防ぐプロの見方

古民家再生の業者「見積もり」でチェックすべき重要項目|「一式」は危険?追加費用を防ぐプロの見方

リノベーションの見積書は、専門用語が並んでいて何がなんだか分からない…と頭を抱える方が多い書類です。

しかし、この書類は単なる「請求額」ではなく、「その業者が家の状態をどこまで深く理解し、どのレベルの暮らしを提供しようとしているか」を示す「設計図」そのものです。

特に信州の古民家においては、寒さ対策や構造補強など、見るべきポイントが特殊です。

「総額」の安さに惑わされないための、具体的なチェックリストを公開します。

1. 最大の危険信号は「○○一式」の多用

見積書の中で、最も警戒すべき言葉。それは「一式(いっしき)」です。

  • 悪い例: 木工事一式 300万円
  • 良い例:
    • 床下地組(〇〇材) 〇〇㎡ × 単価
    • 無垢フローリング(ナラ材・厚さ15mm) 〇〇㎡ × 単価
    • 壁下地(石膏ボード 厚さ12.5mm) 〇〇㎡ × 単価

「一式」と書かれている場合、そこにどんな材料が使われ、どの程度の手間が含まれているかが不明瞭です。

後から「この壁も直して欲しい」と言った時に、「それは見積もりの『一式』には入っていません」と断られるトラブルの元凶になります。

【対策】

「一式」の項目があったら、必ず「内訳明細(何が含まれているか)」を提出してもらいましょう。これを嫌がる業者は、どんぶり勘定の可能性が高いです。

2. 古民家特有の「必須項目」が入っているか?

一般的なリフォームの見積もりにはない、古民家再生ならではの項目が計上されているか確認してください。これらが抜けていると、後で高額な追加請求が発生します。

チェック項目内容と重要性
揚屋(あげや)・不陸(ふろく)調整古民家は必ず傾いています。ジャッキで持ち上げて水平に戻す工事費が入っているか?これがないと、建具が閉まらない家になります。
古材洗い・塗装煤(すす)けた梁を綺麗にする費用。手作業で洗うため意外と手間がかかります。「そのまま」なのか「磨く」のか確認を。
手壊し解体(分別解体)重機でバリバリ壊すのではなく、再利用する建具や梁を丁寧に手作業で外す費用。ここをケチると、貴重な古材まで壊されてしまいます。
残置物処分費前の住人の荷物が残っている場合、その処分費は誰が持つのか?(※通常は施主負担か、別途見積もりになります)

3. 信州の命綱「断熱・サッシ」のスペック詳細

長野県で最も重要なのがここです。「断熱改修工事」という項目があっても、その中身がスカスカでは意味がありません。

  • 断熱材の種類と厚み:「グラスウール 10k 50mm」なのか「高性能グラスウール 16k 100mm」なのか。数字が大きいほど性能が良いです。信州なら壁・天井は高性能なものを、十分な厚みで入れる必要があります。
  • サッシ(窓)の仕様:ここが一番金額差が出ます。「アルミサッシ(ペアガラス)」で見積もられているなら要注意。信州の冬にはスペック不足です。「樹脂サッシ(ペア または トリプルガラス)」あるいは「木製サッシ」になっているか確認してください。初期費用が高くても、光熱費で元が取れます。

4. 恐怖の「追加工事」に関する条項

古民家リノベーションは、解体してみないと分からない「想定外」がつきものです。

  • シロアリ被害・腐食:床を剥がしたら土台が腐っていた、というのは日常茶飯事です。
  • 見積もりのルール:見積書や契約書に、「隠れた瑕疵(欠陥)が見つかった場合の費用負担」についてどう書かれているか確認しましょう。良心的な業者は、あらかじめ「予備費(補修用予算)」として50万〜100万円ほどを見積もりに計上しているか、あるいは「腐食があった場合は別途実費がかかります」と事前に口頭で説明してくれます。

5. 「安さ」の理由を見抜く比較テクニック

A社(1,500万円)とB社(2,000万円)で迷った時、単純に金額だけでA社を選んではいけません。

  • A社が安い理由: 断熱材が入っていない、窓がアルミ、傾き修正が入っていない、廃材処分費が別…。これでは結局、寒くて住みにくい家になります。
  • B社が高い理由: 樹脂サッシ採用、耐震補強込み、左官職人の手仕事…。こちらの方が「長持ちする家」かもしれません。

【比較のコツ】

総額ではなく、「同じ条件(仕様)」で比較することです。

他社の見積もりを見せて(金額は伏せて)、「このB社の断熱仕様と同じ内容で、A社さんがやるといくらになりますか?」と聞いてみると、本当の実力差が見えてきます。

まとめ:見積書は業者からの「ラブレター」である

良い見積書は、項目が細かく、備考欄に丁寧な説明があり、「施主に安心して暮らしてほしい」という業者の想い(誠意)が伝わってくるものです。

  • 「一式」に逃げず、詳細を開示しているか?
  • 信州の寒さや、古民家の傾きを考慮しているか?
  • リスク(追加費用)について事前に説明があるか?

この3点をクリアした見積書を出してくる業者なら、信頼して工事を任せることができるでしょう。

金額の多寡だけでなく、その「中身」を読み解くことが、古民家再生成功への第一歩です。