薪ストーブの「煙突掃除」は自分でできる?費用と頻度|命を守るメンテナンスの鉄則
パチパチと燃える炎に癒やされた冬が終わり、ストーブを焚かなくなったら、必ずやらなければならないのが「煙突掃除」です。
「あまり焚かなかったから、今年はパスしてもいい?」 絶対にダメです。 煙突内部に溜まった煤(すす)やタールを放置すると、次の冬に「煙道火災(えんどうかさい)」という、煙突の中で煤が爆発的に燃え上がる恐ろしい事故を引き起こす原因になります。1,000℃を超える熱で煙突が真っ赤になり、最悪の場合、家全体が火事になります。
安全に次の冬を迎えるために、正しい頻度と、DIYのリスク・費用を理解しておきましょう。
目次
1. 頻度は「年に1回」が絶対ルール
使用頻度に関わらず、シーズンオフ(5月〜6月頃)に最低1回は必ず行ってください。
なぜ「春」なのか?
- 煤(すす)が固まる前: 煤やタールは、梅雨の湿気を吸うとカチカチに固まり、ブラシで落ちにくくなります。乾燥している春のうちに落とすのが鉄則です。
- 点検: 次のシーズン直前(秋)に掃除をして破損が見つかっても、部品の取り寄せや修理が冬に間に合わない可能性があります。
※針葉樹をメインに焚いている場合や、空気を絞って不完全燃焼させがちな場合は、シーズン中(1月頃)にもう一度掃除が必要なこともあります。
2. DIYで掃除は可能?「できる人」の条件
結論から言うと、「条件が揃えば自分でもできるが、推奨はしない」です。 DIYに挑戦しても良いのは、以下の条件をすべて満たす場合のみです。
DIYができる3つの条件
- 安全な屋根: 平屋である、もしくは屋根の勾配が緩やかで、安全に作業できる足場がある。
- 道具: 専用のブラシと、それを繋ぐロッド(棒)、室内を汚さないための養生シートなどを持っている。
- 覚悟: 万が一、屋根から落ちたり、室内を煤だらけにしたりしても自己責任と割り切れる。
DIYの費用(道具代)
- 初期投資: ブラシ・ロッド・養生用具で 約15,000円〜25,000円
- ランニングコスト: 0円(自分の労力のみ)
一度道具を揃えれば、毎年の費用はかかりません。これがDIY最大の魅力です。 しかし、信州の家は屋根の勾配が急(雪国仕様)なことが多く、プロでも命綱なしでは登れないケースが多々あります。「少しでも怖い」と感じたら、絶対に登らないでください。
3. プロに頼む費用とメリット
「高い」と思われがちですが、その金額には「掃除」以上の価値が含まれています。
費用相場(長野県内)
- 基本料金: 25,000円 〜 40,000円 ※屋根の勾配や高さ、煙突の形状によって変動します。
プロに頼む3つのメリット
- 圧倒的な「安全」: 高所作業のリスクを回避できます。怪我をして入院費を払うリスクを考えれば、数万円は安い保険です。
- 「本体」のメンテナンス: プロの仕事は煙突掃除だけではありません。ストーブ本体の点検、扉のガラス清掃、ガスケット(気密パッキン)の交換、耐火レンガの補修などもセットで行ってくれる業者が多いです。
- 異常の早期発見: 「トップ(煙突の出口)の網が破れている」「鳥が巣を作っている」「内部にヒビが入っている」。こうした素人では気づかない不具合を発見し、大事故を防いでくれます。
4. 「下から掃除」ならDIYできる?
最近は、屋根に登らず、室内からブラシを突っ込んで掃除できる「ボトムアップ式(下から掃除)」のキットも販売されています。
- メリット: 屋根に登らなくていいので安全。
- デメリット: 煤が室内に落ちてくるため、完璧な養生(ビニール袋で密閉するなど)が必要。部屋中が真っ黒になるリスクと隣り合わせです。また、煙突トップ(出口)の詰まりや汚れ具合を目視確認できません。
「簡易的な掃除」としては有効ですが、数年に一度はやはり上(屋根)からの点検が必要です。
まとめ:初心者はまず「プロ」に学ぶべし
薪ストーブを導入して最初の数年は、迷わずプロに依頼することをおすすめします。 そして、作業当日は職人さんの後ろについて、 「どれくらい煤が溜まっていましたか?」 「私の焚き方は合っていますか?」 と質問攻めにしてください。
プロは煤の状態を見れば、「乾燥不足の薪を使っている」「空気を絞りすぎている」といった焚き方の癖まで見抜きます。 そのアドバイスは、ストーブを長持ちさせ、薪を節約するための貴重な授業料になります。
「自分でやるのは、構造と焚き方を完全に理解してから」 それまでは、信州の冬を安全に楽しむための必要経費と考え、プロの手を借りるのが賢い選択です。