長野県で土地を買う前に見るハザードマップ|土砂災害レッドゾーンと浸水想定の読み方
2019年の台風19号で、長野市穂保の千曲川堤防が決壊しました。北陸新幹線の車両が水に浸かった映像を覚えている方も多いはずです。
長野県は山と川に囲まれた地形です。長野県の資料によれば、地すべり危険箇所は1,241箇所で全国1位、土石流危険渓流は5,912渓流で全国8位。土地を選ぶとき、価格や日当たりと同じ重みで確認すべき情報があります。
この記事では、何を、どこで、どう確認するかを整理します。すべて無料で、購入前に自分で調べられます。
目次
1. 確認する4つのリスク
| リスク | 確認するもの | 建築への影響 |
| 土砂災害 | 土砂災害警戒区域・特別警戒区域 | レッドゾーンは構造規制あり |
| 洪水・浸水 | 洪水浸水想定区域、想定浸水深 | 基礎高さ・間取りの検討 |
| 地震・液状化 | 揺れやすさ、液状化の可能性 | 地盤改良の要否に直結 |
| 盛土 | 大規模盛土造成地マップ | 造成の履歴と地盤の安定性 |
2. どこで調べるか
① 重ねるハザードマップ(国土交通省)
最初に見るべきサイトです。住所を入れると、洪水・土砂災害・津波などのリスクを地図に重ねて表示できます。全国どこでも同じ操作で確認できます。
② 市町村のハザードマップ
市町村が独自に作成しているものです。避難所の位置や、地域固有の情報が載っています。役場のウェブサイトか窓口で入手できます。
③ 長野県の土砂災害警戒区域等の情報
県が指定した警戒区域を地図で確認できます。指定は随時追加されます。古い資料ではなく最新の情報を見てください。
④ 重要事項説明での確認
宅地建物取引業者が仲介する場合、土砂災害警戒区域内かどうかは重要事項説明で告知される義務があります。ただし説明されるのは「区域内かどうか」であって、リスクの程度まで踏み込むとは限りません。自分でも地図を見てください。
3. 土砂災害警戒区域 ── イエローとレッドの違い
| 区域 | 通称 | 意味 | 建築の制限 |
| 土砂災害警戒区域 | イエローゾーン | 土砂災害のおそれがある区域 | 建築制限なし(情報提供・警戒避難体制の整備) |
| 土砂災害特別警戒区域 | レッドゾーン | 建築物に損壊が生じ、住民に危害のおそれ | 居室のある建築物は構造規制。開発に許可が要る |
レッドゾーンでは家が建てられないわけではありません。ただし、土砂の力に耐える構造(鉄筋コンクリートの壁を設けるなど)が求められ、建築費が数百万円上がることがあります。特定開発行為には知事の許可も必要です。
イエローゾーンに建築制限はありませんが、資産価値と売却のしやすさには影響します。将来売る可能性があるなら、その点も含めて判断してください。
4. 浸水想定区域で考えること
ハザードマップには想定浸水深が色分けで示されています。0.5m未満、0.5〜3m、3〜5m…という区分です。
| 想定浸水深 | 意味 | 検討すること |
| 0.5m未満 | 床下浸水の可能性 | 基礎を高くする |
| 0.5 〜 3m | 1階が水没する可能性 | 基礎を高くする/寝室と電気設備を2階に |
| 3m以上 | 2階まで達する可能性 | 土地そのものの再検討 |
設計で対応できる余地があります。基礎を高くする(高基礎)、給湯器やエアコンの室外機を高い位置に設置する、分電盤を2階に置く。これらは新築時なら比較的少ない追加費用で実現できます。
ただし長野県では、基礎を高くすると玄関までの階段が増え、冬の凍結時に危険という別の問題が生まれます。設計者とよく相談してください。
5. 地盤・液状化と盛土
災害リスクは、そのまま地盤改良費に跳ね返ります。
- 旧河道・埋め立てた水田 → 軟弱地盤の可能性が高い
- 大規模盛土造成地 → 造成の履歴を確認する
- 液状化の可能性がある区域 → 地盤改良の工法が変わる
地盤改良は30万〜200万円の幅があり、土地の価格差を簡単に飲み込みます。土地の履歴から推し量る方法は地盤調査・地盤改良の費用にまとめています。
なお、2023年5月に盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)が施行され、土地の用途を問わず危険な盛土が規制されるようになりました。造成地を検討する場合は、造成が法に基づいて行われたものかを確認してください。
6. リスクがある土地を避けるべきか
長野県は山がちな地形のため、リスクゼロの土地だけを探すと選択肢がほとんどなくなります。
現実的な判断はこうです。
| 区分 | 判断 |
| レッドゾーン | 避けるのが無難。建てるなら構造規制と追加費用を織り込む |
| イエローゾーン | リスクを理解したうえでなら可。価格は下がる |
| 浸水深0.5m未満 | 基礎の高さで対応できる |
| 浸水深3m以上 | 再検討を推奨 |
| 液状化の可能性 | 地盤改良の予算を厚めに見る |
大切なのは「知らずに買わないこと」です。リスクを知ったうえで、価格の安さと引き換えに受け入れるのは、ひとつの判断です。
よくある質問
Q. ハザードマップは購入前のいつ見ればいいですか?
内見の前です。地図で確認してから現地に行けば、「なぜこの土地は安いのか」の理由が見えます。物件情報の住所が分かった時点で調べられます。
Q. 火災保険や地震保険に影響しますか?
水災補償の要否の判断材料になります。浸水想定区域なら水災補償を外さないでください。保険料は上がりますが、必要な備えです。火災保険の考え方は火災保険を活用する雪害・風害リフォームも参考になります。
Q. レッドゾーンだと住宅ローンは組めませんか?
組めないわけではありませんが、担保評価が下がる可能性があります。金融機関によって扱いが異なるため、購入前に相談してください。
Q. 既に持っている土地がレッドゾーンに指定されました。
指定は随時行われるため、あり得ることです。既存の建物に遡って規制がかかることは基本的にありませんが、建て替えの際には規制の対象になります。市町村の建築指導課に確認してください。
まとめ
- 確認するのは土砂災害・浸水・液状化・盛土の4つ
- 重ねるハザードマップ(国土交通省)から始める。無料で誰でも見られる
- レッドゾーンは構造規制があり、建築費が数百万円上がることがある
- イエローゾーンに建築制限はないが、資産価値には影響する
- 浸水深0.5〜3mなら高基礎と設備の配置で対応できる余地がある
- 内見の前に地図を見る。安い理由が見えてくる