古民家再生の費用相場【長野県】県の実例は500万〜4,600万円、内訳と予算の考え方
古民家再生の費用は、工事の範囲で決まります。ふだん使う部屋を中心に直す部分改修は約400万〜500万円の実例があり、骨組みだけにして全体を直す工事は1,500万〜2,500万円(100㎡ほどの場合)が目安です。長野県が公表している住宅の実例では、約180㎡の養蚕民家の全体改修に4,000万円かかっています。
この記事は、長野県で古民家を買って直したい人、実家の古民家を直して住みたい人に向けて、規模ごとの費用、何にいくらかかるかの内訳、古民家に特有の費用、予算の立て方をまとめます。数字は、長野県と国土交通省の資料、業界団体の調査で確かめたものです。
規模別の費用の目安
工事の範囲を3つに分けて、目安と根拠を並べます。金額は工事費で、物件の購入費と外構は含みません。
| 規模 | 主な工事 | 費用の目安 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 部分改修 | ふだん使う部屋と水まわりの一部。建物の外周で耐震と断熱を行う | 約400万〜500万円の実例 | 長野県の資料。175㎡の本棟造りを500万円で改修した例と、県の耐震改修の補助を使った工事(古民家に限りません)の平均約394万円 |
| 水まわりと断熱が中心 | 台所・浴室・トイレ・洗面の交換、内装、床・壁・天井・窓の断熱 | 水まわり4か所の入れ替えで約120万〜250万円。内装は別。断熱は240万〜650万円 | 水まわりは全国の相場、断熱は一般の戸建て(30坪)の目安。古民家は床面積が広いぶん、上がります |
| 骨組みだけにして全体を直す | 解体、基礎と骨組みの補強、屋根、断熱、設備、内外装のすべて | 1,500万〜2,500万円(100㎡ほど)。約180㎡では4,000万円台の実例 | 一般の戸建ての目安と、長野県の資料の実例 |
- 真ん中の行と、全体改修の1,500万〜2,500万円は、全国の相場をもとにした目安です。長野県の戸建てフルリフォームの費用と同じ数字を使っています
- 国土交通省が2011年にまとめた一覧では、「古民家再生」は1,200万〜3,000万円でした(工務店など約40社への調査。国土交通省「リフォームの内容と価格について」)
- 古民家は、100㎡では収まらない家が多くあります。県の資料の「先進事例」10件は、面積の分かる9件がすべて180㎡以上でした。面積が2倍なら、費用もおおよそ2倍と考えてください
長野県が公表している実例の工事費
長野県は、「古民家等活用マニュアル」(令和2年3月)で、県内の古民家の改修の実例と、おおよその工事費を公表しています。住宅の例と、店や宿に直した例を抜き出しました。
| 所在地・直したあとの使い方 | 建物 | 全体の工事費 | 1㎡あたり |
|---|---|---|---|
| (所在地の記載なし)住宅・部分改修 | 明治40年の本棟造り 175㎡ | 500万円(外構は別) | 約2.9万円 |
| 長和町・体験住宅(旅館) | 昭和2年 356.4㎡ | 1,800万円(外構は別) | 約5.1万円 |
| 箕輪町・交流施設 | 江戸末期 主屋328㎡ | 2,500万円 | 約7.6万円 |
| 茅野市・住宅 | 明治後期の養蚕民家 182.6㎡(減築後) | 4,000万円(外構は別) | 約21.9万円 |
| 南相木村・住宅(交流施設) | 明治2年(面積の記載なし) | 4,300万円 | — |
| 松本市・飲食店と住宅 | 江戸時代の本棟造り 221.82㎡ | 4,600万円(厨房の設備と外構は別) | 約20.7万円 |
- 1㎡あたりの金額は、工事費を面積で割った計算値です。約3万円から約22万円まで、7倍以上の開きがあります
- 500万円の例は、外周にある寝室・トイレ・廊下にしぼって耐震と断熱を行いました。耐震の補助100万円と、当時の県の助成30万円を使い、持ち主の負担は370万円でした
- 茅野市の例は、床・壁・天井の断熱、屋根の葺き替え、浴室、薪ストーブ、床暖房、太陽光発電まで行っています。1坪あたりに直すと約72万円です
- 改修の年が書かれている例は、平成28年〜令和元年の工事です。いまは、あとで述べるとおり工事費が上がっています
古民家と新築のどちらを選ぶかは、古民家再生と新築、長野県ではどちらを選ぶかで比べています。
何にいくらかかるか:工事費の内訳
内訳が公表されている住宅の2例です。項目の分け方は、資料のままです。
| 茅野市の住宅(4,000万円) | 金額 | 南相木村の住宅(4,300万円) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 外装・内装の改修(法令への適合と耐震補強を含む) | 2,980万円 | 建築工事 | 2,900万円 |
| 設備工事 | 900万円 | 耐震化の工事 | 400万円 |
| 断熱改修 | 120万円 | 給排水などの工事 | 300万円 |
| 外構工事 | 別 | 電気工事 | 250万円 |
| — | — | 諸経費 | 450万円 |
- どちらも、建物そのものを直す工事が全体の約7割を占めます(茅野市は約75%、南相木村は約67%)
- 設備と給排水・電気は、茅野市で約23%、南相木村で約13%です。床暖房や太陽光発電を入れると、設備の割合が上がります
- 諸経費は、南相木村の例で全体の約10%です
水まわりの工事の進め方は古民家の水まわりリフォームの注意点、断熱と薪ストーブの費用は古民家の断熱と薪ストーブの費用で扱っています。
古民家に特有の費用
ふつうの戸建てのリフォームでは出てこない項目です。公的な資料で確かめられた数字だけを載せます。数字の無い項目は、見積もりで確かめる項目です。
| 項目 | 確かめられた数字 | 補足 |
|---|---|---|
| 耐震補強 | 耐震壁の設置 1か所10万円、基礎の補強 1mあたり5万円(県の資料の目安) | 県の補助を使った耐震改修は、工事費が平均224.5万円でした(平成27年度、174件) |
| 屋根の葺き替え | 瓦から金属などの軽い屋根へ 1㎡あたり2万円(県の資料の目安) | 屋根が150㎡なら約300万円の計算です。茅葺きの葺き替えは、公的な資料で金額を確かめられませんでした |
| 建物を持ち上げて基礎を作る | 金額の内訳の公表なし | 松本市の例は、建物を持ち上げて基礎を打ち、土台を新しくしました。全体で4,600万円です |
| 曳き家・移築 | 国土交通省の2011年の一覧で800万円から | 小布施町の店舗の例は、曳き家と解体で600万円でした |
| 土台や柱の腐れ・シロアリの被害 | 金額の公表なし | 県の資料は、石の上に柱を立てる造りでは、土台や雨のかかる部分の腐れとシロアリの被害が出やすいとしています |
| 土壁の塗り直し | 金額の公表なし | 壁を残すか、はがして断熱材を入れるかで、工事の内容が変わります |
| 浄化槽 | 補助の上限を、5人槽で33.2万円としている町村が複数あります(上松町・坂城町・御代田町など) | 下水道の無い地域で必要です。青木村は46.6万円、阿智村は89.1万円が上限です(2026年10月に確認) |
出典は長野県「古民家等の改修における課題」と、同「先進事例の紹介」です。県の資料は、基礎の工事や骨組みの取り替えには特別な工法が要り、工事費が多額になる場合があると書いています。耐震をどこまで行うかは古民家再生の耐震はどこまで必要かで解説しています。
長野県ならではの条件
雪の量で、屋根と耐震の費用が変わる
建物を設計するときに見込む雪の深さ(垂直積雪量)は、上田市役所の地点で50cm、長野市役所で80cm、茅野市役所で76cmです。飯山市は200cm以上、白馬村は300〜450cmです。雪の多い地域ほど、屋根と骨組みに求められる強さが大きくなります。耐震改修の補助も、多雪区域の10市町村は市町村の上限が140万円で、多くの市町村の115万円より高く設定されています。
凍結に備えて、水道管を深く埋める
敷地の中の水道管を埋める深さは、上田市で60cm以上、茅野市で80cm以上(蓼科・白樺湖は100cm以上)が標準です。松本市は、凍結する深さを70cmとしています。古民家の水まわりを新しくするときは、床下と敷地の配管もやり直すことが多く、掘る深さのぶん費用がかかります。
寒さ:部屋をしぼって断熱する方法がある
県の資料は、建物全体の断熱は工事費が高くなり、居室だけの断熱は費用を抑えられる一方で、暖かい部屋と寒い部屋の温度差と、壁の中の結露に注意が要ると説明しています。上の500万円の例も、ふだん使う部屋にしぼっています。
工事費は、ここ10年で約3割上がっている
国土交通省の建設工事費デフレーター(工事費の動きを表す指数)で、木造住宅は2020年度を100として、2015年度が93.5、2025年度が122.3です。10年で約3割上がりました(国土交通省「建設工事費デフレーター」)。
- 県の実例(平成28年〜令和元年の工事)と比べても、2025年度の指数は約2〜3割高くなっています
- 2011年の一覧の「古民家再生 1,200万〜3,000万円」に、2015年度からの上昇分の約3割を足すと、約1,600万〜3,900万円です。計算上の参考ですが、県の実例の4,000万円台と近い水準です
- 数年前の体験談や見積もりの金額は、そのままでは当てはまりません。いまの見積もりで確かめてください
予算の立て方:追加の工事に備える
住宅リフォーム推進協議会の調査(2025年7〜8月、リフォームをした1,175人)では、費用が予算を上回った人が30.1%いました。上回った理由は次のとおりです(住宅リフォームに関する消費者・事業者に関する実態調査)。
| 予算を上回った理由(複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 設備を当初より良いものにした | 47.4% |
| 予定より直す場所が増えた | 41.9% |
| 想定外の工事が必要になった(骨組みや構造の補修など) | 22.6% |
この調査は古民家に限ったものではありません。古民家は、解体してから土台の腐れやシロアリの被害が見つかることが多く、想定外の工事が起きやすい建物です。次の順で予算を組みます。
- 買う前、設計の前に建物を調べる:県の資料も、既存住宅状況調査(インスペクション)を重要な点に挙げています。床下と小屋裏を見てもらいます
- 工事の優先順位を決める:雨漏りと骨組みの傷みを先に直します。次に耐震と断熱、そのあとに設備と内装です
- 追加の工事の決め方を、契約の前に書面にする:解体して傷みが見つかったときに、だれが、いつ、いくらで決めるかを確かめます
- 予備のお金を残す:何%残せばよいかを示した公的な資料は、確かめられませんでした。調べた結果をもとに、業者に「追加が出るとしたら、どこで、いくらか」を聞いて決めます
- 補助金を先に調べる:県と耐震の補助は、着工の前に手続きが要ります
使える制度と上限額は古民家再生の補助金【長野県・2026年度】にまとめています。窓の断熱は国の制度で1戸100万円まで、耐震改修は多くの市町村で最大165万円です。
見積もりで確かめること
- 「一式」の中身:解体、基礎、骨組みの補修、屋根が、それぞれいくらか
- 含まれていない工事:外構、浄化槽、残っている家財の片づけ、設計と申請の費用。県の実例でも、外構は別になっているものがありました
- 耐震の目標:改修のあとの評点をいくつにするか。補助は、評点1.0以上が条件です
- 断熱の範囲:家全体か、部屋をしぼるか。窓の数と種類
- 古民家の工事の経験:県の資料は、伝統的な工法と耐震に詳しい設計者・職人を選ぶよう求めています
見積書の読み方は、古民家再生の見積もりで確かめることで詳しく説明しています。
よくある質問
古民家は、新築より安く直せますか
部分改修なら、新築よりずっと低い金額で住めるようになります。全体を直すと、新築に近い水準になります。茅野市の実例は1坪あたり約72万円でした。新築の一般的な注文住宅の坪単価の目安は、75万〜95万円です。古民家は面積が広いぶん、総額も大きくなります。
1,000万円の予算で、どこまで直せますか
一般の戸建てでは、台所・浴室・トイレ・洗面の4か所を同じ場所で入れ替える工事が約120万〜250万円(全国の相場)で、内装を直すとさらに加わります。広い古民家では、家全体ではなく、使う部屋をしぼって水まわり・断熱・耐震を行う計画になります。県の資料には、175㎡の古民家を500万円で直した例があります。
自分で直せば、費用は下がりますか
内装の仕上げは、自分で行って費用を抑える人がいます。県は、専門家が関わらない不適切な改修が増えるおそれを指摘しています。骨組み、耐震、電気、給排水は、業者に任せてください。
まとめ
- 部分改修は約400万〜500万円の実例があります。全体を直す工事は、100㎡ほどで1,500万〜2,500万円が目安です
- 長野県が公表している住宅の実例では、約180㎡の全体改修が4,000万円、内訳は建物の工事が約7割でした
- 古民家は面積が広く、1㎡あたりの工事費は約3万〜22万円と開きがあります。どこまで直すかを先に決めます
- 耐震壁は1か所10万円、基礎の補強は1mあたり5万円、屋根の葺き替えは1㎡あたり2万円が、県の資料の目安です
- 木造住宅の工事費は、2015年度から2025年度で約3割上がっています。古い金額は当てにしないでください
- 予算を上回る人は約3割います。建物の調査を先に受け、追加の工事の決め方を書面にしておきます