雪かきが楽な外構設計【長野県】屋根雪の置き場は屋根面積の6割以上が目安
雪かきを楽にする外構は、「雪をどこに置くか」を先に決めることから始まります。長野県の手引き「雪に強い住まいづくり」は、屋根から下ろす雪の置き場(貯雪場)の広さを、その雪を受け持つ屋根の面積の6割以上とする目安を示しています。
この記事は、長野県で家を建てる人、駐車場や庭をつくり直す人に向けたものです。雪の置き場、屋根から雪が落ちる場所、道路との境目、玄関から車までの通り道、舗装と除雪機を、県や市の案内、気象庁の観測値、メーカーの公式資料にもとづいて順に整理します。
まず、住む場所の雪の量を確かめる
長野県は、地域によって雪の量が大きく違います。気象庁の平年値(1991〜2020年の平均)で、1年でいちばん深く積もったときの深さ(最深積雪)を比べると、次のとおりです。
| 観測地点 | 年の最深積雪 | 1年の降雪の合計 |
|---|---|---|
| 野沢温泉 | 205cm | 1,087cm |
| 小谷 | 160cm | 852cm |
| 飯山 | 144cm | 821cm |
| 信濃町 | 114cm | 726cm |
| 菅平(上田市) | 104cm | 648cm |
| 白馬 | 100cm | 655cm |
| 開田高原(木曽町) | 75cm | 430cm |
| 大町 | 59cm | 454cm |
| 軽井沢 | 35cm | 141cm |
| 長野 | 33cm | 163cm |
| 松本 | 26cm | 76cm |
| 諏訪 | 21cm | 71cm |
| 飯田 | 20cm | 61cm |
出典は気象庁「過去の気象データ検索」の平年値です。上田、佐久、伊那の観測所は、積雪を観測していないので載せていません。
- 最深積雪が1mを超える地域(飯山、野沢温泉、小谷、信濃町、白馬など):雪は春まで残り、置き場に積み上がっていきます。置き場の広さが、外構の計画の中心になります
- 最深積雪が20〜35cmの地域(長野、松本、諏訪、飯田、軽井沢など):降るたびに片付ける雪かきが中心です。置き場までの距離と、日陰で凍る場所を減らすことを優先します
- 平年値は30年の平均です。同じ市町村でも、標高や場所で雪の量は変わります。大雪の年の様子は、近所の人や地元の業者に聞いておくと確かです
雪の置き場を先に決める
屋根の雪の置き場は「屋根の面積の6割以上」
長野県住宅部がまとめた「雪に強い住まいづくり」(平成18年12月)は、屋根から下ろした雪の置き場について、幅や面積が足りないと、雪を全部下ろしきらないうちにいっぱいになると説明しています。そのうえで、次の目安を図で示しています。
- 置き場の面積 ÷ その置き場に雪を下ろす屋根の面積 = 0.6以上
- 置き場の奥行きは、軒先から測ります
この目安を、屋根の大きさに当てはめて計算すると、次のようになります。
| 雪を受け持つ屋根(片側) | 屋根の面積 | 置き場の広さの目安(6割) |
|---|---|---|
| 奥行き3m×幅8m | 24㎡ | 14.4㎡以上 |
| 奥行き4m×幅8m | 32㎡ | 19.2㎡以上 |
| 奥行き5m×幅10m | 50㎡ | 30㎡以上 |
表は、県の目安をもとに計算した例です。屋根の形、雪の量、雪を下ろす回数で必要な広さは変わるので、設計のときに建築会社と確かめてください。
駐車場や通路の雪の置き場
駐車場や通路からどかした雪の置き場について、広さを数字で示した公的な目安は、確認できませんでした。次の考え方で場所を決めます。
- 雪を運ぶ距離を短くする:駐車場と通路のすぐ横に、何も置かない場所を残します。花壇、物置、室外機、灯油タンクを置き場の候補地に置かないようにします
- 屋根の雪の置き場と分けて数える:屋根から落ちる雪と、地面からどかす雪が同じ場所に集まると、すぐにいっぱいになります
- 置き場がいっぱいになったあとを考える:県の手引きは、雪を敷地の中で動かす作業や、敷地の外へ運び出す作業がしやすい配置にし、重機が入れる道にも配慮するよう勧めています
- 隣の家との境目に塀を立てず、たがいの雪の置き場として使うことを考える、という案を、新潟県の資料は挙げています。境界のフェンスを雪に強いものにする方法と合わせて、早めに隣の家と話しておきます
屋根から雪が落ちる場所を、通り道と駐車場から外す
県の手引きは、住宅を計画するときに、玄関の前、車庫の前、隣の敷地に雪を落とさないように屋根の向きを決めることを求めています。外構の計画でも、屋根のどちら側に雪が落ちるかを最初に確かめます。
落ちた雪は、軒の真下ではなく、少し離れた場所まで飛びます。秋田県横手市が建築主への注意として公表している表(北海道建築指導センターの図書からの抜粋)では、次のとおりです。
| 軒の高さ | 屋根の勾配 | 屋根の奥行き2.7m | 屋根の奥行き4.5m | 屋根の奥行き6.3m |
|---|---|---|---|---|
| 3m(1階の軒に相当) | 10分の4 | 2.39m | 2.92m | 3.31m |
| 3m(1階の軒に相当) | 10分の6 | 2.46m | 2.89m | 3.18m |
| 6m(2階の軒に相当) | 10分の4 | 3.57m | 4.44m | 5.08m |
| 6m(2階の軒に相当) | 10分の6 | 3.83m | 4.62m | 5.18m |
2階の屋根から落ちる雪は、3.5〜5mほど先まで届くことがあります。出典は横手市「屋根からの落雪被害の予防について」です。雪の質や屋根の材料で変わるので、あくまで参考の数字です。
- この範囲に、玄関までの通路、駐車場、カーポート、給湯器や室外機を置かないようにします。県の手引きは、落ちた雪で室外機が壊れた例を挙げ、落雪が見込まれる場所への設置を避けるよう勧めています
- 屋根の向きを変えられないときは、屋根に雪止めを付けます。種類と費用は雪止めの種類と設置費用をご覧ください
- 屋根の雪が道路に落ちた場合、長野市は、市の除雪の対象にならず、建物の所有者の負担で片付けるよう案内しています。歩行者や車に被害が出ると、所有者が責任を負うことがあります
道路との境目:寄せ雪は自分で片付け、道路には出さない
除雪車が通ったあと、玄関や駐車場の前に雪の山が残ります。長野県の建設事務所は、この「寄せ雪」を各家庭で除雪するよう呼びかけています。長野市の案内も同じです。
片付けた雪を道路に出すことは、法令で禁じられています。
| 法令 | 内容 |
|---|---|
| 道路法 第43条 | みだりに道路に物をたい積し、道路の構造や交通に支障を及ぼすおそれのある行為をしてはならない |
| 道路交通法 第76条第3項 | 交通の妨害となるような方法で、物をみだりに道路に置いてはならない |
| 長野県道路交通法施行細則 第21条 | 交通の妨害となるような方法で、積雪をみだりに道路に捨ててはならない |
- 寄せ雪を置く場所を、出入り口の横に残しておきます。門柱、植え込み、郵便受けで出入り口の両側をふさぐと、雪を敷地の奥まで運ぶことになります
- 側溝や用水路にも雪を捨てないよう、長野市は呼びかけています。下流で雪が固まって水路が詰まり、家が浸水するおそれがあるためです
- 雪を流すための水路(流雪溝)がある地域では、使える時間や決まりを市町村に確かめます
玄関から車までの通り道を短く、屋根の下に
県の手引きは、通路の雪かきを「毎日行わなければならない作業」としたうえで、次の工夫を挙げています。
- 玄関までの通路を短くする
- 通路と車庫を兼ねて、雪かきをする面積を減らす
- 通路に屋根をかける。または、屋根付きのカーポートと合わせて使う
- 玄関に、ひさしの付いたポーチを設ける(外開きのドアは、雪が積もると開かないことがあります)
- 雪かきの道具をしまう場所を、玄関の近くに確保する
カーポートを通路の屋根として使うときは、雪の重さに耐える強さが要ります。柱の位置が雪かきの邪魔にならないか、建物の屋根から雪が落ちてこないかも、合わせて確かめます。
舗装と除雪機:道具が通る幅と、しまう場所
舗装の仕上げ
- 砂利の地面は、スコップやスノーダンプの先が石に当たり、雪と一緒に砂利をすくいやすくなります。人が歩く通路と車のタイヤが通る部分は、コンクリートやアスファルトにしておくと、道具を滑らせて雪を押せます
- 階段や段差は、道具が引っかかる場所です。置き場までの道筋に段差をつくらないようにします
- 勾配は、凍結のしやすさと水はけの両方に関わります。雪国向けの勾配を数字で示した公的な基準は確認できなかったので、敷地の高低差に合わせた勾配と、水が流れる先を、図面で確かめてください
除雪機を使うなら、幅と保管場所を図面に入れる
家庭用の除雪機は、雪をかき込む幅(除雪幅)で大きさが分かれます。ホンダの現行の製品では、次のとおりです。
| 区分 | 除雪幅 | メーカー希望小売価格(税込) |
|---|---|---|
| 小型 | 55〜71cm | 270,600〜533,500円 |
| 小型(ハイブリッド) | 62〜72cm | 645,700〜799,700円 |
| 中型(ハイブリッド) | 80〜92cm | 909,700〜1,304,600円 |
| 大型 | 110cm | 1,953,600〜2,096,600円 |
出典はホンダの除雪機の製品一覧(2026年10月時点)です。小型のHSS760nは、全長1,335mm、全幅620mm、全高1,110mm、重さ105kgと公表されています。
- 通路や門の幅は、機械の幅に、手で操作するゆとりを足して決めます。買う予定の機種の寸法を、業者に伝えます
- 保管場所から雪かきをする場所まで、段差なしで出せるようにします。物置に入れるなら、入り口の幅と段差を確かめます
- 除雪機は雪を飛ばします。雪を飛ばす先が、道路や隣の敷地にならないように、置き場の向きを決めておきます
設備と組み合わせる:どこまでを外構で減らすか
配置の工夫だけで足りないときは、雪を溶かす設備や、雪を受け止める設備を足します。それぞれの詳しい内容は、別の記事にまとめています。
| 方法 | 向いている場合 | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| ロードヒーティング | 通路やタイヤが通る部分など、範囲を絞って雪かきをなくしたい | 電気式と温水式の比較と費用 |
| 融雪槽・地下水 | 雪の置き場が取れない。運び出す回数を減らしたい | 融雪槽と井戸水の散水の比較 |
| 雪に強いカーポート | 車の上の雪下ろしと、通路の雪かきを減らしたい | 積雪強度の選び方 |
| 庭木の雪囲い | 雪の置き場や落雪の近くに、残したい木がある | 雪囲いの方法と時期 |
ロードヒーティングは、駐車場2台分(約30㎡)の全面で約120万〜200万円(工事費込みの目安)かかります。先に置き場と通り道を決め、残った「どうしても雪かきが大変な場所」だけに設備を入れると、費用を抑えられます。
よくある失敗と避け方
| よくある失敗 | 避け方 |
|---|---|
| 雪の置き場に、花壇・物置・室外機を置いてしまった | 図面に「雪の置き場」と書き入れ、そこには何も置かない |
| 屋根の雪が、通路や駐車場、カーポートの上に落ちる | 屋根のどちら側に雪が落ちるかを確かめ、落ちる範囲を通り道から外す |
| 出入り口の両側を門柱と植え込みでふさぎ、寄せ雪の行き場がない | 出入り口の横に、雪を寄せられる場所を残す |
| 通路が砂利で、道具が引っかかる | 人が歩く部分とタイヤが通る部分を舗装する |
| 除雪機を買ったが、物置から出しにくい | 保管場所と通り道の幅、段差を、計画の段階で決める |
打ち合わせと見積もりで確かめること
- 雪の置き場が、図面のどこにあるか。屋根の雪の分と、駐車場・通路の雪の分を、分けて説明してもらいます
- 屋根の雪が落ちる範囲と、通路・駐車場・カーポート・設備の位置が重なっていないか
- 除雪車が通ったあとの寄せ雪を、どこに寄せるか
- 舗装の範囲、勾配、水が流れる先。冬に日が当たらず凍りやすい場所はどこか
- 除雪機や道具の保管場所と、そこからの通り道の幅
- 置き場がいっぱいになったとき、雪を運び出す車が入れるか
雪の多い地域の工事に慣れた業者の見分け方は雪国の外構業者の選び方を参考にしてください。
よくある質問
いまの家でも、雪かきを楽にできますか
できます。置き場の候補地にある物を動かす、通り道だけを舗装する、屋根に雪止めを付ける、道具をしまう場所を玄関の近くに移す、という順に、費用の小さいものから見直します。
雪の少ない松本や飯田でも、雪の置き場は要りますか
要ります。平年の最深積雪は松本で26cm、飯田で20cmですが、寄せ雪を各家庭で片付けることと、道路に雪を出せないことは、県内のどこでも同じです。出入り口の横に、雪を寄せる場所を残しておきます。
隣の家との境目に、雪を積んでもよいですか
自分の敷地の中に積むのが基本です。屋根の雪が隣の敷地に落ちない配置にすることを、県の手引きも求めています。境目を雪の置き場として使いたいときは、先に隣の家と話し合ってください。
まとめ
- 外構の計画は、雪の置き場を先に決めます。屋根の雪の置き場は、長野県の手引きで「屋根の面積の6割以上」が目安です
- 屋根から落ちる雪は、2階の軒からだと3.5〜5mほど先まで届くことがあります。通路、駐車場、設備をこの範囲から外します
- 除雪車が残す寄せ雪は、各家庭で片付けます。道路に雪を出すことは、道路法と道路交通法、県の細則で禁じられています
- 玄関から車までの通り道は、短く、屋根の下にまとめます
- 最深積雪の平年値は、野沢温泉の205cmから飯田の20cmまで開きがあります。住む場所の雪の量に合わせて、設備をどこまで足すかを決めます