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長野県のヒートショック対策は住まいで決まる|入浴中の死亡が交通事故の4倍という現実と、温度差を消す順番

長野県のヒートショック対策は住まいで決まる|入浴中の死亡が交通事故の4倍という現実と、温度差を消す順番

冬の入浴中に起きる事故は、長野県では交通事故よりずっと多く起きています。「ながのヒートショック対策キャンペーン」は、長野県衛生年報をもとに県内の「不慮の溺死及び溺水」による死亡者数が211件で、高齢者の不慮の事故のなかで最も多いと説明しています。同じ資料での交通事故は50件。およそ4倍の開きです(出典:ながのヒートショック対策キャンペーン)。

全国では、入浴に関する事故で亡くなった方が約19,000人と推計されたこともあります(同キャンペーンによる引用。消費者庁ニュースリリース 平成29年1月25日)。ヒートショックが原因の死亡に限った数字ではありませんが、規模の見当はつきます。

そしてこのキャンペーンは、長野県と公益社団法人 長野県建築士会などが共催し、上田市・小諸市・佐久市・塩尻市・須坂市・諏訪市・千曲市・東御市・中野市・長野市・松本市・小布施町・御代田町・山ノ内町と長野県医師会が後援しています。つまりヒートショックは、入り方を気をつければ済む話ではなく、住まいの造りで下げられるリスクとして位置づけられているということです。

キャンペーンが掲げる言葉が、この記事の主題をそのまま言い表しています。「温度のバリアフリー化」。段差をなくすのと同じ感覚で、家の中の温度差をなくしていく、という考え方です。

この記事では、なぜ長野の家で温度差が生まれるのかを整理したうえで、どこから手を付けると効果が大きいのかを順番に並べます。「浴室を暖める」の一言で片づけず、費用と効き方の関係まで踏み込みます。

ヒートショックは「家の中の移動」で起きている

ヒートショックとは、急な温度変化によって血圧が大きく上下し、心臓や血管に負担がかかることを指します。冬の入浴で起きやすいのは、短い時間に体が正反対の刺激を受けるからです。

  1. 暖かい居間から寒い脱衣室へ移動する。体は熱を逃がすまいと血管を縮め、血圧が上がる。
  2. 服を脱いでさらに冷える。血圧はもう一段上がる。
  3. 熱い湯に入る。今度は血管が広がり、血圧が急に下がる。
  4. 湯から立ち上がる。血圧がさらに下がり、意識が遠のくことがある。

問題は3の「熱い湯」だけではありません。1と2で血圧を上げてしまう原因が、脱衣室と浴室の寒さにあります。湯温を下げるだけの対策では、上がった血圧が下がる落差は残ったままです。だから住まい側で温度差そのものを小さくする必要があります。

消費者庁も、浴槽での溺死は12月・1月といった冬場に多くなると注意を呼びかけています(出典:消費者庁 コラム 高齢者の事故)。夏に起きにくく冬に集中するという事実そのものが、原因が温度差にあることを示しています。

長野の家で温度差が大きくなる3つの理由

1. 外が寒いぶん、暖房していない部屋が冷える

長野県は多くの市町村が省エネ基準の3地域・4地域にあたります。同じ断熱性能の家でも、外が寒いほど暖房していない部屋の温度は下がります。居間だけを暖める暮らし方をしていると、脱衣室や廊下との差が大きく開きます。なぜ長野の家が寒くなりやすいのかは一般的な住宅と長野県の寒冷地仕様の違いで詳しく解説しています。

2. 浴室と脱衣室は、断熱が後回しにされやすい

断熱改修を考えるとき、まず思い浮かぶのは居間や寝室です。ところがヒートショックが起きるのは、その居間ではなく脱衣室と浴室。在来工法の浴室はタイル張りで床下がそのまま外気に通じていることも多く、家の中でもっとも冷える場所になりがちです。

3. 断熱していない窓が、部屋ごと冷やす

熱が逃げる経路のうち、窓の占める割合は大きく、脱衣室や浴室の小さな窓でも、そこから冷やされた空気が足元に落ちてきます。窓の断熱については窓の断熱リフォーム徹底比較、床の冷えについては床の断熱リフォームの種類と費用が参考になります。

県が示す7つの対策と、住まいでできること

「ながのヒートショック対策キャンペーン」は、次の7点を挙げています。

  • 湯はり時に浴室を暖める
  • 脱衣室も暖めておく
  • 湯温設定は41度以下
  • 入浴前に家族に一言かける
  • 入浴前に水分を摂る
  • かけ湯をしてから入る
  • お湯に浸かるのは10分以内

このうち最初の2つが住まいの話で、残りの5つは入り方の工夫です。入り方は今日から変えられますが、毎回の心がけに頼る対策でもあります。住まい側の対策は一度やれば毎日効き続けるのが違いです。冬のあいだ毎晩、家族全員に効きます。

長野県後期高齢者医療広域連合も、高齢者の不慮の事故による死因のうち「不慮の溺死及び溺水」が最も多く、溺水による死亡は年齢とともに増え75歳以上に特に多いと説明しています(出典:長野県後期高齢者医療広域連合 冬、安全にお風呂を楽しむ)。

効果が大きい順に並べた、温度差を消す手順

住まい側の対策には順番があります。予算が限られているなら、上から順に検討するのが合理的です。

優先度対策考え方
1脱衣室を暖める血圧が最初に上がる場所。小型の暖房機を置くだけでも差が縮まる
2浴室を暖める浴室暖房乾燥機、または湯はり時に浴槽のふたを開けて蒸気で暖める
3浴室・脱衣室の窓を断熱する内窓の設置。冷気の落ち込みを止める効果が大きい
4浴室を断熱仕様に入れ替える在来浴室から断熱ユニットバスへ。工事は大きいが根本的
5廊下・トイレの温度差を埋める夜間の移動でも血圧は動く。家全体の温度差へ視野を広げる

1と2は数万円から始められ、3以降は工事になります。順番に意味があるのは、上ほど「費用あたりの温度差の縮まり方」が大きいからです。浴室を丸ごと入れ替えても、脱衣室が寒いままなら血圧の山は残ります。

それぞれの工事の中身と費用は浴室と脱衣室を暖める方法と費用、廊下やトイレの寒さはトイレ・廊下・玄関の温度差をどう埋めるかで個別に扱います。予算ごとに何ができるかは予算別に見るヒートショック対策の優先順位にまとめました。

暖房の方式を変えるという選択肢

部屋ごとに暖める発想から離れて、家全体の温度差を小さくする方法もあります。断熱性能が伴えば、廊下や脱衣室を含めて一定の温度に保つ暮らし方が現実的になります。

ただし断熱が足りない家で全館暖房を入れると、光熱費だけが増えます。成立する条件があるので、全館暖房・全館空調は長野県で成立するかと長野県の暖房方式の選び方をあわせてご覧ください。床暖房を検討する場合は長野県の床暖房|温水式と電気式の費用比較も参考になります。

費用は「健康のため」だけではありません

断熱改修は光熱費にも効きます。同じ工事が、ヒートショックのリスクを下げると同時に暖房費を下げるということです。どのくらいで元が取れるのかは寒冷地リフォームの費用対効果でデータをもとに比較しています。

補助金も使えます。長野県には断熱改修を対象にした信州健康ゼロエネ住宅助成金があり、浴室・脱衣室・寝室などを対象とする「健康省エネリフォーム」という区分が用意されています。制度の名前に「健康」が入っていることが、この工事の位置づけを表しています。手すりの設置や段差の解消といったバリアフリー工事には介護保険の住宅改修も使えるため、バリアフリーリフォームと介護保険補助金の受給条件もご確認ください。

誰に相談するか

ヒートショック対策のリフォームは、「暖房機器を売る話」ではなく「温度差を設計する話」です。浴室だけを新しくして終わる提案ではなく、脱衣室・廊下まで含めてどこが何度になるかを説明できる会社を選んでください。

見分け方としては、次のような質問への答え方が参考になります。

  • 「今、脱衣室は何度くらいですか」と聞いたとき、測ることを提案してくれるか
  • 浴室の断熱と窓の断熱を分けて説明できるか
  • 工事後に何度くらいになる見込みかを、根拠とともに言えるか
  • 介護保険や県の助成のどれが使えるかを整理してくれるか

寒冷地の改修に慣れた会社の見分け方は寒冷地リフォームが得意な業者の見分け方で詳しく解説しています。離れて暮らす親の家をどう直すかは離れて暮らす親の家の寒さ対策で扱います。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 浴室暖房を付ければ、それで十分ですか?

A. 大きな一歩ですが、それだけでは足りないことがあります。血圧が最初に上がるのは服を脱ぐ脱衣室だからです。浴室だけ暖かくても、寒い脱衣室で脱ぐ段階の負担は残ります。脱衣室にも暖房を置く、あるいは浴室のドアを開けて両方を暖めるなど、2つの部屋をひとつづきで考えるのが基本です。

Q. 古い家ですが、断熱工事まではできません。何から始められますか?

A. 脱衣室に小型の暖房機を置くことから始められます。工事も不要で、入浴の15分ほど前に入れておくだけで温度差は縮まります。次に効くのが浴室を暖めることで、浴室暖房乾燥機がなければ湯はりのときに浴槽のふたを開けておく、シャワーで壁を温めるといった方法もあります。県のキャンペーンが挙げる7つの対策は、いずれも今日から始められるものです。

Q. 家族に高齢者はいませんが、対策は必要ですか?

A. リスクは高齢になるほど高まりますが、温度差が体に負担をかけること自体は年齢を問いません。また住まいは長く使うものです。今のうちに断熱を整えておけば、将来の備えになるだけでなく、冬の暮らしやすさと光熱費という形で毎年戻ってきます。リフォームのタイミングで一緒にやってしまうのが、費用の面でも合理的です。

Q. どのくらい費用がかかりますか?

A. 脱衣室用の暖房機は数千円から置けます。内窓の設置は1か所あたり5万〜10万円が目安で、本サイトの窓の断熱リフォーム徹底比較で工法別に比較しています。在来浴室(タイル)から新しい浴室への変更は120万〜200万円、窓の断熱交換や脱衣所の暖房・断熱までセットにした寒冷地フルスペック改修では180万〜250万円が目安で、こちらは長野県で浴室リフォームを成功させる費用相場に内訳があります。金額の幅が大きいので、どこまでやるかを先に決めることが大切です。予算ごとの組み立て方は予算別に見るヒートショック対策の優先順位でまとめています。

Q. 賃貸でもできる対策はありますか?

A. あります。置き型の暖房機、断熱シート、脱衣室のカーテンなど、建物に手を加えない対策で温度差はかなり縮まります。窓に貼る断熱フィルムや、内窓の簡易的な製品を使う方法もあります。工事を伴うものは所有者の承諾が必要なので、まずは置くだけでできることから始めてください。

まとめ

  • 長野県では65歳以上の不慮の溺死及び溺水が211件、交通事故死は50件(令和元年度版長野県衛生年報)
  • 県のキャンペーンは長野県建築士会などと共催。住まいで下げられるリスクとして扱われている
  • 血圧が最初に上がるのは脱衣室。湯温を下げるだけでは温度差は消えない
  • 対策は脱衣室→浴室→窓→浴室本体→廊下・トイレの順に費用対効果が高い
  • 断熱改修は光熱費にも効き、県の助成や介護保険も使える。健康と家計の両面から検討する