離れて暮らす親の家が寒い|長野県の実家で確認すべき5か所と、室温の影響が80歳では30歳の2.7倍という調査
年末に実家へ帰ると、廊下の冷たさに驚く。けれど親は平然としている。「慣れているから大丈夫」と言われて、それ以上は踏み込めないまま正月が終わる。この記事は、そこから先をどう進めるかの話です。
問題は、親世代のほうが寒さの影響を強く受けるのに、寒さを感じにくくなっていることです。国土交通省の審議会資料に、それを示すデータがあります。起床時の血圧と室温の関係を分析したもので、室温が10度上がったときの最高血圧の下がり方は、30歳男性で3.8mmHgだったのに対し、80歳男性では10.2mmHgでした(女性は30歳で5.3mmHg、80歳で11.6mmHg)(出典:国土交通省 社会資本整備審議会 住宅宅地分科会 資料「住宅の温熱環境と健康の関連」)。
同じ寒さでも、年齢によって体への負荷が3倍近く違うということです。住まいの直し方そのものは長野県のヒートショック対策は住まいで決まるにまとめています。ここでは、離れて暮らす側にできることを扱います。
一人暮らしだと、対策のひとつが実行できない
消費者庁が示している入浴事故を防ぐための注意点は、次の5つです。
- 入浴前に脱衣所や浴室を暖める
- 湯温は41度以下、湯に漬かる時間は10分まで
- 浴槽から急に立ち上がらない
- アルコールが抜けるまで、また食後すぐの入浴を控える
- 入浴する前に同居者に一声掛けて、見回ってもらう
一人暮らしの親には、5番目が実行できません。そして1番目の「脱衣所や浴室を暖める」も、暖房機がなければできない。つまり単身高齢世帯では、5つのうち2つが最初から欠けた状態になります。
長野県後期高齢者医療広域連合は、高齢者の不慮の死亡事故のうち最も多い死因が「不慮の溺死及び溺水」であり、溺水による死亡者数は歳を重ねるごとに増え、とくに75歳以上に多いと説明しています(出典:長野県後期高齢者医療広域連合「ヒートショックにご注意ください」)。
長野県全体では、不慮の溺死および溺水による死亡者数が211件で、交通事故の50件を大きく上回ります(出典:ながのヒートショック対策キャンペーン)。
離れていても確認できること
まず状況を把握します。電話で「寒くない?」と聞いても「大丈夫」と返ってくるだけなので、数字にするのが早道です。
- 温度計を送る:数百円から千円台。脱衣室・トイレ・寝室・居間の4か所ぶん送り、「見えるところに置いてほしい」と頼む。読み上げてもらうだけで会話が具体的になります
- 帰省したときに自分で測る:夜と早朝の数字を見る。日中の暖かい時間だけでは実態が分かりません
- 灯油やガスの使用量を聞く:極端に少ない場合、暖房を我慢している可能性があります
- 暖房機の設置状況を見る:居間以外に暖房があるか。脱衣室とトイレを特に確認します
全国調査での冬の脱衣所の日平均室温は12.8度、日最低は10.2度でした。実家の数字がこれを下回るなら、平均的な住まいより厳しい状態だと考えてよいでしょう。
帰省のときに見ておく5か所
| 場所 | 見るところ |
|---|---|
| 脱衣室 | 暖房機があるか。窓から冷気が落ちてこないか |
| 浴室 | 在来のタイル張りか。窓の大きさと種類 |
| トイレ | 暖房便座か。夜間の動線に照明があるか |
| 寝室から水回りまでの経路 | 廊下や階段を通るか。距離と段差 |
| 玄関 | ドアの隙間風。土間の冷たさ |
経路を実際に歩いてみるのが確実です。寝室からトイレまで廊下を通る間取りなら、夜中の移動そのものが負荷になります。この点はトイレ・廊下・玄関の温度差をどう埋めるかで詳しく扱っています。
親が工事を嫌がるとき
ここがいちばん難しいところです。よくある反応と、それぞれへの向き合い方を挙げます。
- 「今さらお金をかけても」:金額の話になっているので、まず1万円以下でできることから始めます。脱衣室の小型ヒーターなら5千〜1万5千円で、工事も要りません
- 「工事の間が大変だから」:内窓の設置は1か所あたり短時間で終わります。大掛かりな工事を想像している場合が多いので、実際の工程を業者から説明してもらうと変わります
- 「寒くないから平気」:温度計の数字とWHOの18度という目安を並べると、話が主観から離れます
- 「他人を家に入れたくない」:地元の業者で、近所の施工実績があるところを選ぶと受け入れられやすくなります
急がば回れで、小さなところから実績をつくるのが結局は早道です。脱衣室が暖かくなった実感があれば、次の話は通りやすくなります。
費用は誰が出すか
子世帯が負担する場合、いくつか整理しておきたい点があります。
- 建物の名義:親名義の家に子が費用を出すと、贈与とみなされる場合があります。金額が大きくなる工事では、税理士や税務署に確認しておくと安心です
- 契約者を誰にするか:補助金は建物の所有者や居住者が申請者になる制度が多く、誰が申請できるかで使える制度が変わります
- 介護保険の住宅改修:親が要支援・要介護の認定を受けていれば、手すりの設置や段差の解消が対象になります。ケアマネジャーとの連携と着工前の申請が前提です。バリアフリーリフォームと介護保険補助金の受給条件へ
- 市町村の補助:断熱改修やリフォーム全般に補助を設けている市町村があります。町内業者の施工が条件のことが多いため、依頼先を決める前に確認してください
予算ごとに何から手を付けるかは予算別に見るヒートショック対策の優先順位にまとめています。
まず手を付けるなら、この順番
- 脱衣室に暖房機を置く(5千〜1万5千円)。工事不要で、いちばん危ない場所の温度差が下がります
- トイレに人感センサー付きヒーターを置く(5千〜1万5千円)。夜中の移動先を暖めます
- 脱衣室と浴室の窓に内窓を入れる(1か所5万〜10万円)。冷気の落ち込みが止まります
- 浴室暖房乾燥機を検討する(10万〜30万円)。電気工事の要否を含めた総額で比べます
浴室と脱衣室の手当てについては浴室と脱衣室を暖める方法と費用で手段ごとの費用と効き方を比較しています。浴室そのものを入れ替える場合は長野県で浴室リフォームを成功させる費用相場と寒冷地向けメーカー比較を参照してください。
業者に相談するときに伝えること
離れて暮らしていると、打ち合わせに毎回同席するのは現実的ではありません。最初の相談で次の点を共有しておくと、その後が回りやすくなります。
- 住んでいるのは高齢の親で、日中は一人であること。工事中の対応や声掛けの配慮に関わります
- 連絡先は子世帯であること。見積もりや変更の連絡先を明確にしておきます
- 実測した室温。数字があると提案の根拠を確認しやすくなります
- 優先順位と上限予算。どこまでやるかを最初に決めておきます
寒冷地の改修に慣れた会社の見分け方は寒冷地リフォームが得意な業者の見分け方で解説しています。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 親が「寒くない」と言います。どう判断すればいいですか?
A. 温度計の数字で判断してください。寒さの感じ方には個人差があり、長年住んでいると慣れてしまいます。WHOは冬季の室温18度以上を強く勧告しており、脱衣室や寝室がこれを大きく下回っているなら、感じ方にかかわらず対策の対象です。
Q. 遠方に住んでいます。工事の立ち会いはどうすればいいですか?
A. 現地調査と着工日、引き渡しの3回に絞って帰省する方が多いようです。それ以外は写真や動画で共有してもらう形が現実的です。打ち合わせの記録を残してくれるか、連絡手段は何かを、業者選びの段階で確認しておいてください。
Q. 実家が古く、断熱工事をしても効果が出るか不安です。
A. 家全体を直す必要はありません。脱衣室やトイレのように狭い空間ほど、少ない工事で温度が変わります。危険が集中する場所から順に手を付けるのが、費用の面でも現実的です。
Q. 親が入浴中に何かあったとき、離れていると気づけません。
A. 消費者庁の注意点にある「入浴前に同居者へ一声掛ける」が実行できないのが単身世帯の弱点です。入浴の時間帯を決めて電話やメッセージのやり取りを習慣にする、近所や親族に声を掛けておくといった方法があります。ただし見守りは代替であって、温度差そのものを減らす対策の代わりにはなりません。
Q. 補助金は子が申請できますか?
A. 制度によります。建物の所有者や居住者を申請者とする制度が多く、誰が申請するかで使える制度が変わります。工事を依頼する業者に、対象になりそうな制度と申請者の要件を確認してもらうのが確実です。いずれの制度も着工前の申請が原則です。
まとめ
- 室温が10度上がったときの血圧の下がり方は30歳男性3.8mmHgに対し80歳男性は10.2mmHg。年齢で負荷が違う
- 溺水による死亡はとくに75歳以上に多い(長野県後期高齢者医療広域連合)
- 単身世帯では、消費者庁の5つの注意点のうち「同居者への声掛け」が実行できない
- まず温度計を送って数字にする。会話が主観から離れます
- 着手は脱衣室の暖房機(5千〜1万5千円)から。工事不要で効果が出る
- 親名義の家に子が費用を出す場合、金額によっては贈与の扱いを確認しておく