古民家再生の業者の選び方【長野県】許可・建築士・保険を自分で調べる7項目
古民家の再生をどこに頼むかは、「実績が豊富」「デザインが良い」といった印象だけでは決められません。建設業の許可、建築士、保険の登録、補助金の申請資格、契約の書面は、どれも契約の前に自分で調べられます。
この記事は、長野県で古民家を直して住みたい人に向けて、業者を見分ける7つの確認項目と、調べる場所をまとめます。頼み先の種類ごとの違いと、契約で確かめることも整理しました。
契約の前に自分で調べられる7項目
| 確かめること | 分かること | 調べる場所 |
|---|---|---|
| 1. 建設業の許可 | 500万円以上の工事を請け負える会社か | 国土交通省の検索システム |
| 2. 建築士 | 建築確認が要る工事の設計と工事監理ができるか | 建築士の免許証、建築士事務所の登録 |
| 3. リフォーム瑕疵保険 | 工事のあとに欠陥が見つかったときの備えがあるか | 住宅瑕疵担保責任保険協会の検索ページ |
| 4. 補助金の申請 | 国と県の補助金を申請できる事業者か | 各制度の公式ページ、業者への確認 |
| 5. 古民家の経験 | 伝統的な木造の調査や再生に関わった実績があるか | 長野県が公表している専門家の一覧、工事中の写真 |
| 6. 断熱の実績 | 寒冷地の断熱を数字で説明できるか | 過去の工事のUA値・断熱等級 |
| 7. 契約と見積もりの書面 | 工事の内容・金額・変更の決まりが書面に残るか | 契約書、見積書、約款 |
1〜4は公の制度で確かめられる項目、5〜7は面談と書類で確かめる項目です。
建設業の許可:500万円以上の工事には許可が要る
建設工事を請け負うには、原則として建設業の許可が要ります。許可が要らないのは、国土交通省が「軽微な建設工事」としている次の工事だけです。金額には消費税を含みます。
| 工事の種類 | 許可が要らない範囲(軽微な建設工事) |
|---|---|
| 建築一式工事 | 1件の請負代金が1,500万円未満の工事、または延べ面積が150㎡未満の木造住宅の工事 |
| 建築一式工事以外(大工・屋根・内装など) | 1件の請負代金が500万円未満の工事 |
- 見積もりが500万円以上になったら、許可の有無を確かめます。許可の有効期間は5年で、更新が要ります
- 許可を受けた会社は、国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で、会社の名前から調べられます
古民家の再生がどのくらいの金額になるかは、古民家再生の費用相場で規模ごとに確かめられます。
建築士:2025年4月から、木造2階建ての大規模な改修に建築確認が要る
2025年4月に建築確認の対象が見直されました。国土交通省のお知らせ(2025年3月版)によると、木造2階建てなどの大規模なリフォームで、2025年4月以降に着手するものは、工事の前に建築確認の手続きが要ります。
| 建物 | 大規模なリフォームの建築確認 |
|---|---|
| 木造2階建て | 必要 |
| 木造平屋(延べ面積200㎡を超える) | 必要 |
| 木造平屋(延べ面積200㎡以下) | 不要 |
- 「大規模なリフォーム」は、壁・柱・床・はり・屋根・階段のうち1種類以上を、半分を超えて直す工事です。階段の架け替えや屋根の全面的な改修が当たります
- 屋根や壁の仕上げ材だけの改修、台所・浴室・トイレの入れ替え、手すりの取り付けは、手続きが要りません
- 延べ面積が100㎡を超える建物で大規模なリフォームをするときは、建築士による設計と工事監理が必要です
- 手続きは着工の前に終える必要があります。いまの基準に合っていない箇所があると、合わせる工事が別に要ることがあります
古民家の再生は、屋根・床・柱に手を入れる工事になりやすく、この見直しに当たるかどうかで手続きが変わります。「この工事に建築確認は要りますか。設計と工事監理は、どの建築士が担当しますか」と、はじめの面談で聞いてください。
古民家の経験:県が公表する専門家と、民間の資格を分けて見る
古民家に関わる肩書きには、公の機関の登録と、団体が認定する資格があります。名刺の肩書きがどちらなのかを分けて見ます。
| 名前 | 運用・認定しているところ | 内容 |
|---|---|---|
| 古民家再生の専門家 | 長野県古民家再生協議会(事務局は県の建築住宅課) | 伝統的な木造建築や古民家の再生に知識のある建築士、大工・棟梁などを登録。県の事業に協力した実績のある36人を公表(2026年5月11日更新) |
| 長野県木造住宅耐震診断士 | 長野県 | 県の講習を受けて登録された建築士。市町村が行う耐震診断に派遣される |
| 古民家鑑定士 | 一般社団法人全国古民家再生協会 | 伝統的な構法と資材の知識を身につけ、古民家の状態を調べる資格。3年ごとに更新 |
| 伝統再築士 | 同上 | 建築士の資格を持つ人が取る資格 |
- 県が公表している専門家は、1級建築士が26人、それ以外の建築士などが10人で、東信6人・南信9人・中信12人・北信9人です。事業所の名前、資格、調査と再生提案の件数、対応できる地域が長野県「古民家再生の専門家の公表について」に載っています
- 古民家鑑定士と伝統再築士は、法律にもとづく国家資格ではありません。団体が認定する資格です。持っていることは、古民家を学んだ目安にはなりますが、工事の腕前や会社の体制を保証するものではありません
- 全国古民家再生協会は、国土交通省の「住宅リフォーム事業者団体登録制度」に登録された16団体の1つです。県内の支部として、松本市に事務局のある長野第二支部が協会の一覧に載っています
資格の名前より確かなのは、実際の工事の記録です。次の2つを頼んでください。
- 工事中の写真を見せてもらう:完成の写真だけでは、柱の根元の傷みや傾きをどう直したかが分かりません。傷んだ柱の下の部分を新しい木に継ぐ「根継ぎ」や、建物を持ち上げて土台を直した工事の写真があるかを聞きます
- 住んでいる家を見せてもらう:完成見学会や、数年たった家の見学ができるかを聞きます。冬の室温や暖房費を、住んでいる人から聞けると判断の材料になります
耐震については、まず市町村の耐震診断を受けます。長野市では、昭和56年5月31日以前に着工した在来軸組構法の木造住宅を対象に、県の耐震診断士が無料で診断します。柱を石の上に立てる伝統的な構法の建物が対象になるかは、市町村に確かめてください。直す範囲の考え方は古民家再生の耐震はどこまで必要かにまとめています。
保険と補助金:登録している業者かどうかで、使えるかが決まる
リフォーム瑕疵保険
リフォーム瑕疵保険は、工事のあとに欠陥が見つかったときの補修費用をまかなう保険です。入るのは業者で、保険法人に登録した業者だけが使えます。
- 保険の対象は、リフォーム工事をしたすべての部分です
- 保険の期間は、構造の主要な部分と雨水の浸入を防ぐ部分が5年、そのほかの部分が1年です
- 工事の途中や完了のときに、保険法人による検査があります
- 業者が倒産したときは、発注した人に保険金が直接支払われます
- 申し込みは工事ごとで、着工の前に行います。契約の前に「この工事に瑕疵保険を付けられますか」と聞いてください
登録している業者は、住宅瑕疵担保責任保険協会の検索ページで調べられます。ただし、全国古民家再生協会は、伝統的な構法の骨組みを直す工事などには保険を付けられない場合があると案内しています。付けられないと言われたら、理由と、代わりの保証の内容を書面でもらってください。
補助金を申請できる事業者か
- 国の住宅省エネ2026キャンペーン(窓の断熱など)は、事業に登録した業者が申請します。施主は自分で申請できません
- 県の信州健康ゼロエネ住宅助成金は、県内に本店を置く事業者が申請します。施工する業者も同じ条件です。県外に本店がある会社に頼むと使えません
- 県の助成は、着工の14日前までに申請が要ります。業者を決めるのが遅れると間に合いません
金額と期限は古民家再生の補助金【長野県・2026年度】で確認できます。
頼み先の種類と、向いている工事
古民家の再生を受ける会社は、大きく4つに分けられます。会社の大きさや知名度ではなく、上の7項目を満たしているかで選びます。
| 頼み先 | 向いている場合 | 確かめること |
|---|---|---|
| 工務店 | 骨組みの補修から仕上げまで、大工の手仕事が多い工事。設計と施工をまとめて頼みたい | 建設業の許可、建築士がいるか、古民家の工事中の写真 |
| 設計事務所 | 間取りを大きく変える、建築確認が要る、設計と工事の確認を施工と分けたい | 建築士事務所の登録、古民家の設計の実績、設計料と工事費の分け方、施工する会社の選び方 |
| リフォーム会社 | 台所・浴室・内装など、範囲のはっきりした工事 | 骨組みに手を入れる工事の経験、下請けの大工がだれか、建設業の許可 |
| 古民家を専門にする会社 | 古い梁や建具を生かす再生、移築、古材の再利用 | 専門とする根拠(工事の件数、写真、県の専門家の一覧に載っているか)、保険、断熱の数字 |
新築に建て替える案と比べたいときは、古民家再生と新築、長野県ではどちらを選ぶかを見てください。
長野県ならではの確認:断熱を数字で答えられるか
長野県の市町村は、省エネ基準の地域区分で2〜5地域に分かれます。寒い地域ほど、求められる断熱の性能(UA値。小さいほど熱が逃げにくい)が厳しくなります。
| 地域区分 | 主な市町村 | 等級5のUA値 | 等級6のUA値 |
|---|---|---|---|
| 2地域(6市町村) | 軽井沢町、川上村、南牧村など | 0.40 | 0.28 |
| 3地域(30市町村) | 佐久市、小諸市、茅野市、白馬村など | 0.50 | 0.28 |
| 4地域(39市町村) | 長野市、松本市、上田市、諏訪市、飯山市など | 0.60 | 0.34 |
| 5地域(2市村) | 飯田市、喬木村 | 0.60 | 0.46 |
古民家でこの水準にどこまで近づけるかは、建物と予算で変わります。大切なのは、業者が目標を数字で示し、過去の工事の数字を答えられるかです。次のように聞いてください。
- 「これまでの古民家の工事で、UA値や断熱等級はどのくらいでしたか。計算書を見せてもらえますか」
- 「すき間の量を測る気密測定(C値)はしていますか」
- 「土壁を残して断熱するとき、壁の中の結露をどう防ぎますか」
- 「水道管の凍結と、屋根の雪の重さには、どう備えますか」
断熱の進め方は古民家の断熱リフォームで解説しています。
面談で聞く、仕上がりの考え方
古民家の再生には、昔の姿に戻す直し方と、古い梁や柱を見せながら今の設備を入れる直し方があります。
- 「これまでの工事で、あえて残した部分と、その理由を教えてください」
- 「梁や建具のうち、この家で残せるもの、残せないものはどれですか」
- 「解体してから傷みが見つかったとき、追加の工事と金額はどう決めますか」
本棟造りや養蚕農家など、県内の古民家の造りは長野県の古民家の特徴で紹介しています。
契約と見積もりで確かめること
住宅の相談窓口「住まいるダイヤル」(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)には、2025年度にリフォームの相談が11,004件寄せられました。新しい相談30,414件の約36%です。訪問販売のトラブルも続いています。
| 国民生活センターに寄せられた相談 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|
| 訪問販売によるリフォーム工事 | 11,879件 | 9,839件 | 5,544件 |
| 点検商法 | 12,550件 | 19,249件 | 19,696件 |
出典は国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法」です(2026年5月31日現在の登録分)。「無料で点検します」と訪ねてきた業者と、その場で契約しないでください。
- 複数の会社から見積もりを取る:同じ図面と同じ条件を渡します。条件がそろっていないと、金額を比べられません
- 「一式」の中身を聞く:数量と単価が書かれているかを見ます。見方は古民家再生の見積もりの確認ポイントにまとめています
- 契約書・約款・図面・見積書をそろえてもらう:住宅リフォーム推進協議会が、契約書、打ち合わせの記録、工事内容の変更の合意書、完了の確認書の標準の書式を公開しています。同じ内容の書面があるかを確かめます
- 追加の工事は、書面で合意してから始める:古民家は、解体してから傷みが見つかることがあります。口約束で進めないでください
- 見積書を第三者に見てもらう:住まいるダイヤルのリフォーム見積チェックサービスは無料です。契約の前の見積書を送ると、建築士の相談員が電話で助言します
訪問販売で契約した場合は、申込みの書面か契約の書面を受け取った日から8日間は、クーリング・オフができます。通知は、はがきなどの書面か、電子メールなどで行います。
よくある質問
大手の会社なら安心ですか
会社の大きさだけでは判断できません。担当する建築士と大工に、古民家の経験があるかが大切です。大手でも地元の会社でも、7項目を同じように確かめてください。
県外の会社に頼んでもよいですか
頼むことはできます。ただし、県の信州健康ゼロエネ住宅助成金は、県内に本店のある事業者でないと使えません。寒冷地の断熱と凍結・積雪の工事の経験も、数字と写真で確かめてください。
まとめ
- 500万円以上の工事(建築一式は1,500万円以上など)には建設業の許可が要ります。国土交通省の検索システムで調べられます
- 2025年4月から、木造2階建ての大規模な改修には建築確認が要ります。延べ面積100㎡を超える建物では、建築士の設計と工事監理が必要です
- リフォーム瑕疵保険の期間は、構造と雨水の部分が5年、そのほかが1年です。登録している業者だけが使えます
- 国の補助金は登録した業者、県の助成は県内に本店のある事業者が申請します
- 古民家の経験は、県が公表している専門家の一覧と工事中の写真で、断熱はUA値などの数字で確かめます
- 見積もりは複数の会社から取り、契約・変更・完了を書面で残します